悪忍 1・2巻


惡忍 1―加藤段蔵無頼伝 (BUNCH COMICS)

惡忍 1―加藤段蔵無頼伝 (BUNCH COMICS)

惡忍 2―加藤段蔵無頼伝 (BUNCH COMICS)

惡忍 2―加藤段蔵無頼伝 (BUNCH COMICS)

 衝動買い。今泉伸二先生の漫画を買って読むの「空のキャンパス」以来だなー(いつの話だ)。

 かつて週間少年ジャンプで描いてた人が今はどんな物を描いてるんだろうという興味&忍者モノは好きなので購入。

 お話は伝説の忍者と言われる「飛び加藤」こと加藤段蔵の破天荒な活躍を描いたピカレスクロマン時代劇。かつて味わった悲劇から「義=主君に仕える事」を良しとせず、己の技と知略で乱世をしたたかに跋扈する様は中々に魅力的。かつての面影をほんの少し残しつつも、この漫画での今泉先生の絵は相当に濃い目の絵に仕上がっていて、お話の雰囲気に合っています。
 
 伊賀の里の仲間を斬殺して抜け忍となった段蔵は追っ手から「外道」と呼ばれ、また自らも自分の事を「悪忍」と言うものの、根っからの悪というわけでもありません。敵には徹底的に容赦なく、その一方で罪無き者には義賊的な一面も見せるあたりは、まさに悪役を主人公に据えた物語の定型。良いベタであります。

 また、謀略を巡らして乱世を手玉に取らんとする段蔵に対して、段蔵が朝倉家に取り入ろうとする際に近づいた侍「富田景政」のいい人っぷりというか武人としての真っ直ぐっぷりが面白い。常に目ン玉ぎらぎらさせてる段蔵と、真面目で人の良い景政の凸凹コンビの対比が、端から見てると実に可笑しい。


 若干絵が古臭いのがほんの少し気になりますが、お話全体としては予想よりも面白かったです。続刊も買い。


  • 余談

 そういや同じく「飛び加藤」が出てくる話といえば藤田和日郎先生の「からくりの君」ですね。長編「からくりサーカス」の下敷きともいえるこの短編、結構好きです。最後に姫が「人形ではありませぬ」って言うシーンが良い。また、人の皮で動く人形って設定が「うしおととら」の「畜生からくり編」と同じ。今の連載作「月光条例」でもかつてのキャラ達が役どころを変えて出演していますし、藤田漫画のこういう「ゆるやかな繋がり」って何かイイ。

夜の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-21))

夜の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-21))

*「からくりの君」が収録されてる短編集。オススメ。