月光条例 1巻
「青き月光でねじれた『おとぎばなし』は
猛き××で正されねばならない」
- 作者: 藤田和日郎
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/06/18
- メディア: コミック
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藤田先生の新刊出ましたー!いやもう今月はコレが楽しみで楽しみで。もー大好きな作家さんなんで今日は褒めちぎっちゃうよー。
サンデーで新連載やるって情報が入ってからというもの、喫茶店で本誌を読んでも敢えてコレだけ読まず情報を完全シャットダウンして臨んだ甲斐あって、実に面白かったです。前回「黒博物館スプリンガルド」の感想のときも書きましたが、この人の漫画は本当に読む前も読んでる最中も読んだ後もワクワクしてたまりません。いいわあ。
<以下ちょこっとネタバレ含みますので完全に予備知識なしで読みたい人は注意>
「岩崎」はケンカが強くてひねくれ者の高校生。一方彼の幼馴染の女子、「エンゲキブ」は明るく快活な人気者。そんな二人の前に現れたのは、絵本の「はちかづきひめ」から出てきた「鉢かづき姫」と、恐ろしい形相で姫を追いかけてきたその兄嫁。兄嫁は青き月光の力によって正気を失い、怪物となっていたのだ。
鉢かづき姫が本から飛び出した拍子に、彼女の持つ「極印」を額に受けてしまった岩崎は、図らずも月光条例の執行者となる。
月光条例とは、青き月光で歪んだ「おとぎばなし」を正すための唯一の法律。条文はただ一つ。
曰く、「青き月光でねじれた『おとぎばなし』は、猛き月光で正されねばならない」
鉢かづき姫の協力を得て兄嫁を正気に戻した岩崎とエンゲキブ。しかし、青き月光でおかしくなってしまった「おとぎばなし」は一つだけではなかった。かくして岩崎とエンゲキブは、怪物と化した「おとぎばなし」の登場人物達との戦いに巻き込まれる事に。
そんな人外の者との激しい戦いで拠り所となるのはたった一つの条例。
その条例の名は、月光条例。
執行者の名は――岩崎月光!
あらすじはそんな感じで1巻から非常に燃えます。相変わらず藤田漫画は温度高いわー。最ッ高。
要するに童話やおとぎ話を題材にしたバトルファンタジー物という事で、今までにも同種の漫画はあったかと思いますが、ベテランの手にかかるとここまで魅力的なものになるという好例。狂ったおとぎ話の登場人物が藤田氏お得意の暗黒ヅラで暴虐と破壊の限りを尽くし、それをメインキャラの月光、エンゲキブ、鉢かづき姫の3人が活き活きと動き回って正す様は痛快の一言。主人公、岩崎月光の「言う事はひねくれ者だけどやる事は超ド真っ直ぐな性格」も少年漫画らしくて見ていて清清しい。
↓こちらは岩崎月光と「三匹のこぶた」のオオカミ。ブタをかばう月光に対して、オオカミが「ブタをよこせばお前は助けてやる」と言うのに対して月光は…
「俺はへそ曲がりだからやれねえなァ!」と来た。やはー!カッコいい!少年漫画の主人公たる資格を十二分に持ち合わせています。
読者に対して、まずは異形の破壊劇でカタルシスを与え、異能の力を持った人間がそれを打ち負かすのを見せて懲悪の快感を与え、さらにバトル後の心情描写によって「熱いもの」や「温かいもの」を読者の心に残していく、という基本スタンスは「うしおととら」「からくりサーカス」と全く変わらず。二十年近く第一線で描き続けてきて尚、この姿勢が微塵も揺るがないから安心してドキドキ出来るんだよなあ、藤田先生の漫画は。
というわけで昔からの藤田漫画ファンは言うに及ばず、ご新規さんにもオススメ。絵にちょっと癖があるけれど、それさえ受け入れられるなら藤田漫画のアツさを味わわない手はありません。大プッシュです。
- 余談
邪悪モードの「さいしょうさま」の顔とか見る限り、相変わらずアニメ化とか絶対に無理ですね。子供には怖すぎるもん。だがそれがいい。それでこそ藤田先生。
- 余談2
最初に月光条例の設定読んだ時に思い出したのが、「うしおととら」の1巻表紙折り返しコメント。
「かわいそうなまま終わってしまう『マッチ売りの少女』が気に入らなかった」から、「うしおととら」を作った、という話。そして今回の月光条例では「おとぎばなし」に直接パンチを入れる事にした模様。うしとら1巻から実に18年。先生の握りこぶしは未だパワーを失っていないようです。
しかし先生、御髪が…ゲフンゲフン。