黒博物館スプリンガルド
「おやすみなさい 跳ぶ者(スプリンガルド)」
- 作者: 藤田和日郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/21
- メディア: コミック
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時は十九世紀、所はロンドン、事件は婦女連続殺人。
事件の犯人と目されるのは「バネ足ジャック」という怪人。実は3年前にも「彼」はロンドンに出没しており、夜な夜な女性を驚かせては甲高い哄笑を残してバネで出来た足で跳び去ったという。しかし、その頃は女性を驚かせるだけで殺人までは犯していなかった。
「彼」は何故また再び現れたのか?何故殺しをするようになったのか?そしてその正体は――?
犯人の正体に目星をつけたスコットランドヤードのロッケンフィールド警部は、「暴走機関車」の異名そのままに捜査に突っ走り、遂に「バネ足ジャック」にぶちあたる。
そして警部は知る事になる。
怪人の正体と、動機と、哀しい片想いを。
あらすじはそんな所。いつのまにか藤田さんてばこんな作品描いてたんですねえ。知らなかった。
掲載はモーニングとの事で、「うしおととら」や「からくりサーカス」みたいなわかりやすい熱血というよりは、夜の寓話的な浪漫溢れる怪奇譚に仕上がってます。ただし登場人物たちの「想い」がストレートに描かれる藤田マンガの背骨は青年誌でも微塵も揺るがず。それらが物語に哀しさや渋さそして何よりカッコ良さを加えていて、本当に面白いマンガに仕上がってます。くそう、やっぱ俺藤田さんのマンガ大好きだわ。
詳細はネタバレになっちゃうんで言えませんので舞台仕立ての事でも。タイトルの「黒博物館(ブラックミュージアム)」というのは犯罪の証拠品を展示した一般者には非公開の博物館の事で、物語は警部がここを訪れる場面から始まります。そして博物館の案内役の学芸員(キュレーター)に「バネ足ジャックの左足」を見せてもらい、かつての事件を警部が学芸員に説明していくという構成。
で、毎話の始めに学芸員と警部のやり取りがあるんですが、話が進むごとに夢中になる学芸員がまた可愛い事可愛い事。あ、学芸員さんは片目に髪が掛かってるミステリアスな感じの黒服の女性*1。おそらくは藤田マンガの基本フォーマットとも言える「永遠を歩く女」の一人なのでしょう。で、そういう本来であれば「不可侵の存在」が少女のように夢中になる様が、なんていうかその…下品なんですが…萌える。
もちろん話自体も非常に面白かったです。是非またこのシリーズで描いて欲しいなあ。
あ、あと後日談の掌編「マザア・グウス」も良い出来。こちらは実に痛快なオチを見せるボーイミーツガールの物語。
いやあ、何でこの人のマンガは読む前も読んだ後もこんなにワクワクするのかねえ。たまらん。