おおかみこどもの雨と雪


 ちょいネタバレ含みます。未見の方はご注意。

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

 CMで面白そうだなー、と思っていて、BD出たんで購入。予備知識なしで見ました。

 元々「時をかける少女」が好きで、以前のTV放映で「サマーウォーズ」も見て面白かったので、細田節に期待して見たんですが、期待通りの出来で満足でした。

 前2作のようなドラマティックな展開は無いんですが、花という母親の成長と雨と雪というおおかみこどもたちの成長の物語を、全体に流れる音楽や美麗な映像や雰囲気が優しく包み込んでいて、とても沁みる良き映画でした。
 
 私も一緒に観た相方も、子供が二人いるんだからどっちかが狼を選んでどっちかが人間を選ぶんだろう、という予想を立てていまして、それはやはり予想通り。で、実は私としては、ラストで狼になった方の子は崖の上で一吠えするであろう、という予想もしていまして、それも当たりでした。『人を捨て獣と成る物語』と来れば、是非とも別れ際に「山月記」的なシーンがあって欲しい、という希望も込みでの予想でしたが。
 
 で、ブックレットの冒頭文でもあった通り、この映画は単なる異形を扱ったファンタジーではなく、主軸はあくまでも『親の成長』『子の成長』を描いた物語だと感じました。もちろん、そう感じた事は近年私自身が親になった事も無関係ではないかと。

 当たり前の事ですが、親は子が生まれた瞬間に親として完成するわけではなく、段々と「親に成っていく」のです。また子も同様に、いつまでも乳飲み子ではありません。いつの間にか一人で立ち、駆け回り、話し、揺れ、傷つき、決意する、「大人」へと成っていきます。
 
 そういう意味で、映画としてはかなり花の視点に寄った形で雨と雪を見ていたため、二人それぞれの「大人への脱皮」のシーンが、寂しいやら嬉しいやら頼もしいやらで、もう沁みる事沁みる事。
 
 親世代である「おおかみおとこ」と「花」は、親を亡くす事で、強制的に親離れをせざるを得ませんでした。しかし、「花」はそうではありません。彼女自身のわがままで、子世代である雨と雪をこの時点で親離れさせないようにする事も出来たでしょう。

 それでも、彼女はそうしませんでした。雨に「行かないで」と泣きつく事も、雪について町に下りてゆく事もしませんでした。それは、彼女が13年の家族としての生活の中で「親に成る事」が出来たからだと思います*1
 
 そうして送り出された雨と雪は、いつの日か親と成り、花と同じ気持ちで、真っ直ぐ子供の背中を見送る事が出来るでしょう。

 

 きっとその子が、

 人間だろうと、おおかみだろうと。



 

‐余談‐

 ちなみに特典フィルムは

 

 花さんの「事後」でした。うむ。
 
 そういえばエヴァ新劇場版のDVD特典フィルムでもベッドの上の裸シンジ君だったなー。何故か裸フィルムの引きが強い僕の右手に誰か名前をつけてくれ。中二的な。

 


 

*1:そういう意味で、韮崎のじいさんの畑に対する「(やる事をやったら)何もするな。放っとけ」という台詞も、この映画の根底に流れる「成長を見守る者」の示唆として使われていると思います