このマンガが凄いから読め!2011

 昨年に引きつづき、今年もヒロさんが「このマンガが凄いから読め!」企画を開催しておりましたので参加です。

 今年も「人に読ませたい凄い漫画」と言われて脳裏に浮かんだ5作品を上げました。本当にマッハで出てきましたので、今年も豊作だったんだなあ、と思います。


 ではゴー。

 
5位 薔薇だって書けるよ 全1巻売野機子

薔薇だって書けるよ―売野機子作品集

薔薇だって書けるよ―売野機子作品集

 新人、売野機子先生の短編集。ちょっと変わった設定の恋愛話あり、同性愛の話あり、ちょっとSF設定の話あり。しかしそのいずれもハズレが無いのが素晴らしい。

 「楽園」の第一号で表題作を読んだ時は「ああ、これは凄い人が出てきたなあ」と思ったものです。

 聞くところによるとコミティア出身との事で、かなりそちらで研鑽を積んできたご様子。絵も綺麗で安定しているし、話もわかりやすいです。その上でちゃんと読者の心に沁みる物語を紡ぎ上げられるのですから、本当にたいしたものです。
 
 ではこの短編集の中で自分のイチ押しを一つ紹介。

「春田の犯行」
 
 主人公は28歳の女性「春田」。18の頃、バイト先の男の子「雨宮」が大好きだった彼女は、十年後に彼の結婚式に出席する事になる。

 ただし、来賓として。

 そして春田は何事も無いような顔で彼の結婚式に出席し、とある犯行を実行に移す。その犯行とは――
 

 春田の犯行が、凶器が、涙が、逃走する後ろ姿が、とてつもなく切ない短編です。単なる失恋物語というだけでなくて、30歳間近の未婚女性の閉塞感も散りばめることで、ある程度の年齢の大人が共感できる物語に仕上げているのが実に良く出来ています。

 
 恋愛短編が好きな人々よ、読め!

 

  • 余談

 売野先生に限らず、「楽園」は良い漫画家さんを集めてますよねー。楽園のシリーズは単行本の装丁も凝ってますし、漫画を「所有する喜び」を大事にしてる気がします。グッジョブ。


 


4位 鉄風 既刊3巻太田モアレ

鉄風 1 (アフタヌーンKC)

鉄風 1 (アフタヌーンKC)

鉄風(3) (アフタヌーンKC)

鉄風(3) (アフタヌーンKC)

 格闘漫画数あれど、その中でも女性格闘漫画数あれど、こんなにダークサイドの情熱を持った女子高生が主人公の漫画が今まであっただろうかいやない!(反語)

 これもGoodアフタヌーンで1話を読んだ時は度肝抜かれましたよ。

 お話は天才型の主人公「石堂夏央」が総合格闘技にハマっていくのを描いた物語。今まではちょっと努力するだけでどんな事でも周りを追い越してしまう「天才」だった夏央が、格闘技の奥深さを知るにつけどんどんその魅力の虜になっていきます。

 しかしその情熱が「私は充実している人間を――許さない!!」とか「うん!頑張ろう!!頑張って あの子の笑顔を潰してあげよう」とかいう方向に出力されるものだから、もう堪らない。

 今までの真っ直ぐな魅力のヒロインとは違うけれど、片時も目が離せないタイプの主人公です。

 
 格闘漫画好きな人々よ、読め!

 

  • 過去記事

 →鉄風 1・2巻感想
 

  • 超余談

 ライバルの「馬渡ゆずこ」が夏央とは正反対の前向きで明るいキャラなのですが、素晴らしい事に眉毛が太いんですよ。ええ、趣味ですが何か?
 とまあそれはさておき、ゆずこがメインで出てくる話のときは毎回タイトルが眉毛ネタなのが面白いです。

 こういう細かいネタ部分も何気に面白かったりします。ナイスセンス。

 


3位 アイアムアヒーロー 既刊5巻花沢健吾

アイアムアヒーロー 1 (ビッグコミックス)

アイアムアヒーロー 1 (ビッグコミックス)

アイアムアヒーロー 5 (ビッグコミックス)

アイアムアヒーロー 5 (ビッグコミックス)

 
 ヤバいです。本気で劇厄注意ですコレ。

 出来るだけネタバレなしで読んで欲しいマンガなのですので余り説明したくは無いのですが、サバイバルホラーマンガです。とにかく怖いです。

 実は自分は内容全然知らないまま読んだので、1巻の終わりで恐怖のズンドコですよ。だって今までの「花沢式冴えない青年・中年漫画」かと思って読み進めてたらちょっとずつ妙な描写が入ってきて、1巻の終わり〜2巻のアタマでは完全に世界が変わってますもの。
 
 花沢先生の上手な所はネットとか非モテとか時代の閉塞感とかを巧く絡めた「現代人のリアルな日常描写」だと思うのですが、今作はその能力をフルパワーで駆使してその「日常」が侵食されていく恐怖を描くのだからもう破壊力は抜群。

 フィクションだとはわかっていても自分の日常が壊れていく恐怖に襲われてしまいます。
 
 読んだ直後はエレベーターとか人ごみとかで「いててっ!」とか言う人がいたら若干の尿漏れすら想定の範囲内になる程に、密集した人ごみが怖くなります。お試しあれ!

 
 怖い漫画好きな人々よ、読め!

 

 
2位 超人学園 既刊3巻石沢庸介

超人学園(1) (少年マガジンKC)

超人学園(1) (少年マガジンKC)

超人学園(3) (講談社コミックス)

超人学園(3) (講談社コミックス)

 「進撃の巨人」が面白い?オーケー、そいつは認めよう。

 「どうぶつの国」がアツい?オーケーオーケー、そいつは認めよう。

 しかし別冊少年マガジン連載作で次に注目されるべきはこの「超人学園」であると今ここに断言する!
 
 ではあらすじをば。

 主人公「神冗徒無(シンジョウアダム)」は様々なトラブルや異能者を引き寄せてしまう『超・主人公体質』。来る日も来る日もトラブルまみれの彼は、周りの人に被害が及ばないよう、人と関わらない様に放浪していた。

 ある日彼が雨宿りに入った洋館で出会ったのは、そこに住む『超・高悪圧思念魔人類(通称・悪魔)』にして超絶マイペースな破天荒少女「オスカ・L・デューク」。

 しばし談笑する二人。300年の長きにわたり退屈ぶっこいていたオスカにとって、アダムのトラブル話はワクワクする冒険譚だった。
 
 人に怖がられる事を恐れ、洋館に閉じこもっていた悪魔少女オスカに、厄介者扱いされて放浪していた自らの寂しさを重ね見るアダム。

 そこでアダムは考えた。

 人の輪に入れない化け物達が笑いあい、学びあい、寄り添いあう場所――『超人学園』の創設を!
 
 化け物達の超・バトルあり、超・笑いあり、超・涙ありの最高の学園生活が、今、始まる!
 

 あらすじはそんな感じ。

 アダムが厄介事を引き寄せてバトルになったり、出会った化け物を仲間にしたりという展開がメインですが、アダム達「超人学園」のアツい絆が本気で泣けます。

 また、随所に出てくるギャグ描写も掛け合い漫才のようで面白い。しばしば吹き出します。
 
 妖怪・異形を扱った作品というのは「異形の哀しみ」や「異形との温かい絆」を描く作品が少なからずあるのですが、それをここまでド直球で放り投げ、「温かい」どころか「熱い」レベルまでガツンと引き上げて読者のストライクゾーンを撃ち抜く作品というのは、そうそうあるもんじゃありません。

 また、アダムが『超・主人公体質』というだけで超能力も超戦闘能力も持っていないのが、かなり好みの設定です。というのも、その前向きさと思いやりで持って次々と超人達の哀しみを理解し、あっけらかんと受け入れるという構造、言い換えるなら「特殊能力の無い人間こそが、その「心」でもって化け物達を仲間に出来る」という構造は、真っ向から「心の在り様」の大切さを訴えていると思うんですよ。

 これは「超人学園」という漫画にはじまった事ではなくて、他の作品でもしばしば見受けられる構造ですが、やはりこういうテーマがあるとビシッと背骨が通ります。少年漫画かくあるべし。ホント最高です。

 
 全力で笑って泣ける少年漫画が好きな人々よ、読め!
 



1位 惑星のさみだれ 全10巻水上悟志

惑星のさみだれ 3 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 3 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 10 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 10 (ヤングキングコミックス)

 やはり今年の1位はこれでしょう。

 今さら説明なんていらない絶対王道少年漫画。あちこちで言われてるとおり、ご近所サイキックアクション+少年達の成長+ボーイミーツガールを組み合わせて最高のエンターテインメントに仕上げています。

 今までさんざっぱら記事を書いてきたので、詳細はそちらで。とにかく読んで損なしの素晴らしい漫画です。つっても漫画好きの人は大抵読んでると思いますが…。

 2010年の「この漫画が凄いから読め!」ランキングで2位でしたので今年こそは!の思いを込めてというのはもちろん、カンペキな大団円を魅せてくれたという意味でも、堂々の今年度1位の漫画です。

 

 少年漫画好きの人々よ、読め!読め!読め!

 

  • 過去記事

「惑星のさみだれ」 1〜3巻感想

「惑星のさみだれ」 5巻感想

「惑星のさみだれ」 6巻感想

「惑星のさみだれ」 7巻感想

「惑星のさみだれ」 8巻感想

「惑星のさみだれ」 9巻感想

「惑星のさみだれ」 10巻プレ感想

「惑星のさみだれ」 10巻感想

「惑星のさみだれ」のタイトルの意味

  



 というわけで「このマンガが凄いから読め!」企画記事でした。今から集計や他の人のブログを見るのが楽しみです。

 いやあ、漫画ってホントに良い物ですね。

 
 それではまた来年〜。


 あ、それと好みが合うと思った方は下記記事もどうぞ。

  • 関連過去記事

このマンガが凄いから読め!2010年版

漫画ナツ100(2009)

漫画ナツ100(2008)

漫画ナツ100(2007)

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