夜の歌・暁の歌


 「感想はまた明日」なんつって、一日空いちゃったな。昨日は風呂入ってウトウトして気付いたら朝でした。しかしアレだな。この時節にクーラー掛けっぱなしで布団も被らずにパンツ一丁で寝て風邪の一つもひかねえとは、こりゃあよっぽどのナントカだな。ナントカ万歳。

 
 それでは未読だった分の感想をば。


 

夜の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-21))

夜の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-21))

「アキちゃんと森で」…ホラー誌掲載の7P短編。完全に現代を舞台にしたホラー劇として仕立てられていて、少年誌的な明るさや前向きさの要素はありません。ただし「怪異」の描き方は藤田先生の真骨頂。「うしおととら」で初めて衾(フスマ)を見た時の「ぞわり」を再び味わいました。子供読んだらトラウマもんだな、あのシーンは。


 

暁の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-22))

暁の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-22))

「帯刀石仏」…旅の若者が妖怪に悩む村を救う妖怪退治物16P。デビュー前の作品との事で、絵的にも雰囲気的にもデビュー作である「連絡船奇譚」に近い感じでした。また、女性の目鼻の描き方にあさりよしとお先生の影響が一番強く見られるのもこの作品でしょう*1。お話的には登場人物を絞り、魅せたい所だけを見せる作りになっていて、しっかり楽しめました。涼やかなオチが良い。
 作品解説で先生自身も言及されているように、先生の根っこの部分は20年前から本当に変わっていない事がわかる短編でした。コレだけ長い間漫画を描いてきて、微塵も背骨が揺るがないってのは本当に凄い話。藤田センセの背骨ってのはもう、チタンか何かで出来ているんじゃなかろうか。しかも熱血の通ったチタン。

 
 また、文庫版には各話ごとに先生の作品解説が載っていて、これがまた嬉しい誤算*2。相変わらず飄々としつつも、漫画に対する真摯な姿勢が伝わってくる文章でした。

 
 もちろん他の既読作品も堪能させていただきました。満足満足。


  • ちょっと余談

 今まで文庫版って小さい割りに高いし、ちょっと…と思っていましたが、今回読み比べて初めて、紙も印刷も良いので新書版よりも細部やスミベタが鮮明に出てるのに気付きました。


*左が文庫版、右が新書版(少年コミックス版)。ちなみに例の名台詞を言う直前のサキサカ爺さまのアップ。

 左の方がベタのムラが目立たない。またトーンの粒や皺の細線も文庫版の方が整っています。


 はあ、なるほど。高いだけのことはあるんだなあ。漫画文庫を見直しました。

 

  • 過去記事

 で、その名台詞が出てくる短編がこちら。もう大好き。

 →「瞬撃の虚空」感想

 あの台詞は何度読んでもじわりと沁みます。リーマン生活に疲れたときは特に。

  

*1:藤田先生はあさり先生の元アシスタント

*2:新書版の方には載ってません