荒野の蒸気娘 4巻
「機械はすばらしいものだ。間違えてはいけない。
危険なのは人間の心だ」
- 作者: あさりよしとお
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2008/05/24
- メディア: コミック
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<ネタバレ含みますので注意>
荒野を行くロボ姉妹の物語もこれにて完結。
結局彼女達ははロボのまま、アリスはアリスのままエンディングを迎えました。安易に人間になってめでたしめでたしにならずに良かった。やっぱりこうでなくては意味が無い。
「姿はロボですが少女をイメージして下さい」という「要脳内補完コミック」と謳いながらも、実際は補完する必要など全く無く、アリスは最初から最後まで立派に少女でした。確かに体はちょっと(?)いかついけれど。
冒頭に抜き出したのは機械を少女として愛する変態機械技師の台詞。この人がしばしば目がイッちゃってる状態で変態臭い台詞を言うのがこの漫画の笑いどころの一つ。例えばこの場面ではちょっと深い事を言っているようで、この人自身が人としてアブないという事が可笑しい。
ただこの人、ちょっと考えると中々芯を捉えた発言があって面白い。上の台詞なんかも普通に笑い飛ばしてしまえばそこで終わりなのですが、「機械自体には善も悪も無く、それをどう使うかという人間の心にこそ善悪がある」という普遍的なテーマが読み取れます。そして「危険なのは人間の心だ」というこの台詞は、裏を返して「最終兵器的なパワーを持つアリスという機体を、危険でなくするのがアリスの人間としての心」というこの後の流れに繋がっていきます。こういう事をコメディ場面に隠してサラリとやっちゃう手腕があるから、あさりよしとお先生の漫画は侮れない&面白い。
あと、アリスの修理をする時にこの技師が「女の子が下半身を脱ごうとしているんです。席を外していただけませんか」と変態発言をして村長を納屋から出て行かせる場面についても、後から考えると「次世代動力炉を持っているというアリスの秘密」を漏らしたくなかったから、とわかります。
いやあ、(いろんな意味で)いい味出してますよ技師さん。
あと良かったのはバーサーカーモードと思われていた「アビゲイル」にも心があったという事。彼女が怒ったのは、自爆したのは、アリスの人間の心に触れたから。ちょっといい話です。
コメディ作品としても面白かったですし、こうやってちょっと深読みすることも出来る良作でした。
こういう懐の深さがあさり漫画の真髄だよなあ。グッジョブ。
- 余談
ところでこの漫画の一番のツンデレキャラは姉妹に振り回される青年ジョーという事でよろしいでしょうか。