鉄風 1・2巻

「私は充実している人間を――許さない」

鉄風 1 (アフタヌーンKC)

鉄風 1 (アフタヌーンKC)

鉄風 2 (アフタヌーンKC)

鉄風 2 (アフタヌーンKC)

 主人公は天才肌の女子高校生「石堂夏央」。

 身体能力、センス共に並外れた彼女の心にわだかまるものは、天才故の退屈と寂しさ。殊更に努力しなくても人並み以上に出来てしまう彼女にとって、全ての事は退屈な暇つぶしのようなもの。そしてそれ故に彼女は精一杯努力し、充実し、楽しんでいる連中が許せない。

 そしてある日、彼女は「楽しそうに」「充実して」総合格闘技をやっている同級生「馬渡ゆず子」に出会い、彼女を潰すというきっかけをもって格闘技の世界へとのめりこんでいく。

 自分の感情の奥底にあるものが、憧れや嫉妬の裏返しであることに気付かぬまま――。

 お話はそんな感じの格闘技漫画

 Goodアフタヌーン創刊号で1話を読んでから、すっかりやられてしまった漫画で、1・2巻同時発売は嬉しい限り。いやー、面白いわ、コレは。

 主人公が珍しくダークサイド系の情熱を山盛り持った怖ーいお姉さまキャラなのに、ずるかったり陰湿だったりしないから、見ていて嫌な気分になりません。むしろどうやって物語を引っ掻き回してくれるのか、という期待感から、ぐいぐい物語に引き込まれます。

 また、キャラの描き分けもはっきりしていて、主人公とは正反対に、ライバルのゆず子やリンジィは徹底的に「陽」のキャラ作りなのが実にわかりやすくて面白いです。スポーツ物の漫画ってのは「努力型」と「天才型」に分けられるというのは昔から聞く話ですが、「陽の天才」に「陰の天才」が出会って、努力を覚えていくというのは新しい形ですね。

 あと、夏央の友達のケイちゃんが凄く良い味だしてます。格闘技はやらずに昼休みに夏央とだべってるだけなのですが、夏央の事を凄く良く理解しているんですよ。夏央を評して「ナッちゃんって性格悪いよね。でもまっすぐに性格悪いからいいと思うよ」という台詞には膝を打ちましたよ。で、夏央もケイちゃんの前では女の子らしい表情を見せたりもするんですよねえ。それがいい。ま、言ってる事は「まずはソイツを潰そうと思うの…」とかなんですけど。ナイスダークヒロイン。

 そして対極のゆず子の強さとライトサイドっぷりがより引き立っていくという構造。この娘もまた良いキャラしてるんですよ。強いし、明るいし、目いっぱい日々を楽しんでるし、眉毛太いし*1


 コレはいい漫画ですね。同時期に連載してる総合格闘技モノでは遠藤浩輝先生の「オールラウンダー廻」も面白いですけど、これはまた違った方向で楽しませてくれる良作で、新人とは思えない完成度。


 続刊も鉄板で買いです。


 

*1:オー、それは貴方の趣味ですね