ホームセンターてんこ 1巻

「ドリルください!!」

ホームセンターてんこ(1) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

ホームセンターてんこ(1) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

 
 とだ勝之さんって昔マガジンで釣りの漫画描いてた人だよね?今はこんな漫画描いてるんだ…。DIYをテーマにした漫画とはまた随分変わったものを。


 福岡から東京へ引っ越して来た女子高生「井本典子(通称てんこ)」は、狭い隙間に丁度良い棚を探し回っている時に小さなホームセンターを見つける。その店の名は「ホームセンターTENCO」。
 
 「正確なサイズを測らせてください」とてんこの新居にやってきたTENCOの店員「天道巧作(通称テンコー)」は、彼女が「どうしても部屋に置く所がないので処分するつもり」という背の低いチェストに目を付ける。それは彼女が生まれた時に祖母が買ってきてくれた、彼女にとっては大事な物だった。

 てんこの許可も得ず、みるみるチェストをバラバラにしてしまうテンコー。「捨てるんじゃなくて誰かにあげるつもりだったのに!」と涙を浮かべて抗議するてんこに対し、テンコーは「ばーちゃんとの思い出が詰まったコイツを使いやすいように作り直してもらいます。…お客さん自身の手でね!!」と言って電動ドリルを渡す。

 テンコーが作った「部品」を指示通りに組み立てていくてんこ。やがて、大事なチェストは彼女自身の手で隙間にピッタリの縦型のタンスに生まれ変わった。

 その日初めて「物を作る喜び」を知ったてんこは、後日「ホームセンターTENCO」へ行って元気にこう言った。


 「ドリルください!!」


 女子高生てんこのハンドクラフトライフは、こうして始まった!

 あらすじはそんな感じ。パッと見は変化球的な漫画に見えますが、実際はド直球で「物を作る楽しさ」が伝わってくる実に良い漫画でした。

 とだ勝之先生の児童漫画に近いシンプルな絵柄もピッタリお話に合っていて、素直に作品世界に入り込むことが出来ます。目ン玉キラキラさせた子供顔って、やっぱり見てて気持ちよいものです。

 
 で、こちらの漫画の一番良い所は、正直に言ってキャラでもなければストーリー仕立てでもありません。もちろんそれらも悪くは無いのですが、一番の魅力は何と言っても「共感力」。砕いて言うと「あー!あるある!」ってネタ。ここの部分の描き方が本当に絶妙。モノ作りが好きな人がどんなアイテムに反応するか、どんな台詞にビビッと来るのか、実に的確に描かれています。こりゃ作者自身がモノ作りが大好きじゃないと描けない漫画だよ。


↓こちらは初めてのマイドリルで本棚をつくるてんこ。イイ顔してます。

 そう!そうなんだよ!モノ作りって本当にワクワクなんですよ。そりゃまあ自分のイメージ通りに行かない事もあるけれど、それも含めて「手を動かす」ってのはそれだけで楽しいんです。なんなんですかこのニヤニヤ漫画は。自分みたいな人間のツボ突き過ぎですよ!


 それではその他に自分がニヤニヤした所を抜粋。サラで読みたい人は飛ばしてね。


・「先端工具交換(ビットチェン〜ジ)!」…ドリルをドライバーに交換する時にテンコーが言った台詞。ビットの交換とか、色んなビットがズラッと並んでるのとか、萌えるよね!バフとか着けるとね、もうヤバいくらいドキドキします。


・「そーゆー難問を解決するのも作る楽しみのひとつだよ」…てんこが板のカットに失敗した時のテンコーの台詞。そうそう、確かに失敗した瞬間は「あちゃー」なんだけど、「さてどうやってリカバーしてやろうかね」とか「逆にこの失敗を活かして別の形に…」とか考えるのがね、これがまた楽しいんです。わかってらっしゃる。


・「自分が作ったもので誰かが喜んでくれるのって 気持ちいい♥」…テンコーとてんこで作ったイスが子供に大好評。子供の笑顔を見ててんこが言った台詞。これは棚でもシルバーアクセでもプラモデルでもブログでもなんでも共通なんですが、「自分が作ったもの」に誰かが反応してくれるのって本っ当に嬉しいんですよ。で、その反応が嬉くてまた作るんです。これって幸せのインフレスパイラルですよね?


・「ねぇから作ってきた」…特殊な吊り下げボルトを自作したテンコーの台詞。そう!「つくるひと」の合言葉はいつだって「無いものは作る!」なんですよ!だって必要なんだもん。欲しいんだもん。だったら作るしかねえじゃんか。ああんもうニヤニヤだなあ。



 そんなわけで「用も無いのにホームセンター行く人」「東急ハンズでは素材コーナーと工具コーナーで一番心拍数が上がっちゃう人」「ドリルが大好きな人」「子供の頃時計やラジカセを分解して怒られた事がある人」「組立て家具を作る事を主目的に人の引越しの手伝いに行く人」には、強力にオススメします。


 いやーこれは良い漫画を見つけました。完全にドストライクです。


 もちろん続刊も購入決定。