ハルノクニ 1〜4巻

ハルノクニ 4 (少年サンデーコミックス)

ハルノクニ 4 (少年サンデーコミックス)

 終わったらまとめて買おうと思ってた漫画その1。週刊連載でたまたま2話くらい続けて読んで、良い匂いがしたんで終わるまで待ってました。で、念願の最終巻が出たんでまとめ買い+まとめ読み。

 その日、日本一のエリート養成校・紫海館学園高校に通う主人公、片桐聖士(ギリ)の目の前で起こった交通事故。それは彼の幼馴染で大親友の三枝春(ハル)の命を一瞬で奪い去ってしまった。それから約一年が経ったある日、ギリはハルの遺品に隠されていた遺言により、彼の死が事故ではなく、彼が学園の秘密を知ったために実行された謀殺だった事を知る。
 親友を殺した本当の黒幕と闘う為に主人公はハルの命日に紫海館学園を占拠し、新国家「ハルノクニ」の独立を宣言する。国民は彼自身と同級生の荻原志乃、同じく級友の吉田浩一郎(コーさん)、それからハルと言う名前の――一匹の黒ネコ。
 ハルを殺した黒幕「日本国家」の秘密を暴くため、三人と一匹の小国「ハルノクニ」の無謀すぎる闘いが今、始まる!

 以上あらすじ。いやー、面白かったです。高校生の革命劇という舞台仕立ての中で、最終的には「豊かな国とは何か」というテーマを描いた本作品。少年サンデー連載という事で柔らかめには描いているんですが、もっと細かく書けば青年誌でもいける内容なんじゃないかと。いや、逆に言えばコレが少年誌に載っているからこそ意味があるのかも。グッジョブ作者&小学館

 もちろん主人公たちの真っ直ぐさも見ていて気持ち良いのですが、その一方で黒幕である榊総理の演説もなかなかに魅せてくれます。流石にヘルシングの少佐やザビ家の眉無し長兄レベルとまでは行きませんが、カリスマ的な魅力と言う意味においてはかなりのものかと。以下反転引用。ラストのクライマックスの部分なんで、未読の人は是非自分で読んで欲しい。


 「その通り。私は人殺しだよ。…だからどうした?私には理想がある。それをジャマする者は徹底的に殺す。弱い者…頭の悪い者、プライドの無い者は、全て殺す。外国にへつらう者を殺す。夢見がちなリベラルも思考の硬化した保守派も殺す。礼儀知らずの若者も、横柄な中年も、役立たずの老人も、皆、殺す。最低限の義務も果たさず、権利ばかり主張するような輩は、特に念入りに、殺す。…そして日本は「豊かさ」と「誇り」を持つ、真の一等国へと生まれ変わるのだ!」

 いやあ、狂ってますね。ここまで来ると極端だけど、でも榊総理の言う事にも一理あるんだよな。コレもネタバレになるんで反転するけど、最後に自決をしてまで国民に訴えかけた、という点からすれば、彼は単なる独裁者気取りではなくて、恐ろしく真面目な憂国の士だったと言えるのではないか?もちろん正しいか間違ってるかはさておいて。


 何か結局反転ばっかりになっちゃいましたね…。比較的地味な漫画だしサンデーに載ってた割には萌え要素も無いし*1、多分漫画喫茶には置かれない類の漫画なので、見つけたら買っとくと吉。昔マガジンに載ってた「デスペラード」と同じ匂い、つまり一部には非常に人気あるけどなかなか再版されない類の漫画と予測されますので(何気に失礼だなオイ)。いやいや、自分自身はこういう「短い中できちんとテーマを伝えきる漫画」は読んでて気持ち良いんで大好きなんですけどねえ。やっぱ今の漫画は結局わかりやすい派手さとキャラ萌え(燃え)と対決になっちゃうのか?それも何だか寂しいな…。

 ま、何にせよこのコンビの漫画また読んでみたいなあ。どっかで連載される事を気長に待ってます。

  • 余談

 さっき萌えキャラがいない、と書きましたが、あえて言うなら三枝春が男の癖に一番可愛いのは一体どういう事ですか。この絵の感じからして、鈴木央先生が描く美少年が好きな御仁には堪らないんじゃないでしょうか。

*1:偏見だ!!