罪と罰 1・2巻


「その頃僕は ある一つの「計画」に心を囚われていた」

罪と罰 1 (アクションコミックス)

罪と罰 1 (アクションコミックス)

罪と罰 2 (アクションコミックス)

罪と罰 2 (アクションコミックス)

 主人公「たち 弥勒みろく」は引き篭もりの大学生。鬱屈した日々を送る彼は、ある日街で組織的に援交を行う女子高生のグループを目にした。中でもグループのまとめ役「ヒカル」の仲間苛めに強く嫌悪感を抱いた彼の脳裏に、不意にある計画が浮かぶ。
 すぐさまその計画を「馬鹿馬鹿しい」と否定する弥勒。しかしその日彼の中に芽生えた歪んだ欲望は、次第に正義感と目的意識で体裁を整えられ、やがて彼に計画の第一歩を踏み出させる。


 彼が始めたのは援交グループの観察調査。計画はグループの頭、ヒカルの殺害。


 「真夏の太陽が見守るこの部屋で

  殺す 僕はこの女を殺すだろう」


 蝉時雨と夏の日差しの中、彼はそれまで妄想でしか無かった計画を、可能性のある現実として捉えるようになっていた――


 あらすじはそんな所。ドストエフスキーの原作を現代版に翻案したとの事ですが、原作読んでないんでどこまで忠実かはわかりません。

 とりあえず漫画の方は面白いです。落合尚之先生の絵は結構好きなんですが、やっぱりこの人はこういう暗めの人間ドラマが似合うなあ。鉄人28号のオマージュ作「鉄人」もまあまあ面白かったですけど、新興宗教とか洗脳を扱った「黒い羊は迷わない」が俺的ベスト。


 「罪と罰」の方に話を戻しますと、変に冗長になる事も思わせぶりに大ゴマを取る事もなく、結構サクサク話が進みます。ただし主人公が悩む姿や考えている事は細かく描かれていて、彼の行動原理が読者にも良く理解できるようになっています。逆に主人公以外の人間の思索や会話は状況説明程度しかない為、読者はあくまでも主人公の視点から物語を読んでいく事になります。多くの漫画はどこか映画的というか、あえて視点をあちこちにズラす事で物語の全体像を把握させる形なので、主人公視点のみというこの形が逆に新鮮で、話もわかりやすかったです。まあ、この辺は元が昔の小説だからというのもあるんでしょうが。

 
 という事でお話としては2巻で結構進んでます。多分多くても全5巻といった所でしょうか。


 こういう「暗くて内省的+バイオレンス物」は好き。地味に面白いです*1。方向性としては六田登先生の「ICHIGO」に近いのかなー。続巻も購入決定。


  • 以下ネタバレ反転

 個人的にはヒカルよりいじめられっ子のミサの方に嫌悪感を抱く。こういう「他人を引きずり込む沼のような弱さ」「無意識的・日常的に発揮される他者依存性」ってのは明確な悪意よりよっぽどタチが悪い。

 
 

*1:いらん事言うな