学園夢探偵 獏
「ようこそ 夜の向こう側へ」
- 作者: 鹿島麻耶
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/02/22
- メディア: コミック
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前作「リンガフランカ」がかなり面白かった鹿島麻耶先生*1の久方ぶりの新刊。いやー、待ってましたよー。
主人公の浅野修一郎は高校一年生。毎晩悪夢にうなされるせいでいつも寝不足の彼は、ある日訪れた保健室で妙に色気のある上級生「陸前先輩」に出会う。保健室の謎の美女と噂される彼女は天使のように美しく、しかし悪魔のように常軌を逸する行動を取る「ヘンな人」だった。
美人なれど関わりたくない、と思っていた浅野だったが、同級生の女子から『陸前先輩は「夢分析」が出来る』という話を聞き、また他人の夢相談を見事に分析する様を目の当たりにした彼は、自分の悪夢を陸前先輩に相談する事を決意し、保健室の扉を開ける。
「ようこそ 夜の向こう側へ」
そう言って迎える彼女に、彼は「義母を斬殺する悪夢」の事を話し始めた。
夢探偵「陸前獏」の捜査は、彼の悪夢を読み解く事が出来るのか、それとも――
あらすじはそんな感じ。
結論から言うと非常に面白かったです。まさに期待を裏切らない出来。ミステリアスな美女「陸前獏」を中心軸にして、探偵物のサスペンス要素と学園物の人間ドラマ要素を絡み合わせた良作に仕上がってます。また、前作で魅せたコメディの切れの良さが存分に発揮されているのもツボ。この人やっぱギャグのセンスあるわー。で、前作でもそうでしたけど人間ドラマの部分も結構巧いんですよ。コメディの隣で割とヘビーな事を描くんで余計に際立つんでしょうね。
さて、これ以上内容についてあれこれ語るとネタバレになっちゃいますんで言いません。代わりと言っては何ですが、好きな漫画家さんなので敢えて苦言をひとつ。
コメディ部分が面白いのは良いんですが、シリアスな場面でもちょくちょくコメディ要素が紛れ込んでくるのに違和感を感じます。自分なんかあまり切り替えの早い方ではないので、ここでは笑ったらいいのか真面目に読んだ方がいいのか、という感じで戸惑ってしまうんです。もう少し切り分けた方が良かったような気がします。
逆にそういう不安定な構成が、漫画全体を夢うつつのような曖昧で不思議な雰囲気にしているのかも知れませんが。
ともあれ総点としては二重丸。最初から短期連載の予定だったらしく全1巻ですが、この設定なら連載いけるんじゃないでしょうか。というか是非続きを読みたい。未回収の伏線もあるし。
ま、地力のある作家さんだと思いますので、続編にしろ新作にしろ次回作を楽しみに待つとしましょう。出来れば首が長くなり過ぎないくらいの間隔で出して頂けると有難い。
- 余談
もし前作を読んでない人は前作もオススメ。
- 余談2
ネタバレ反転
ちょっと夢診断に詳しい人なら親殺しの夢がどんな意味を持ってるのか知ってると思いますが、この漫画では「そういうオチ」かと思って読んでいくと見事に裏切られます。自分も見事に引っ掛かりました。巧いわー。