風子のいる店
- 作者: 岩明均
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/05
- メディア: 文庫
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初めて岩明均を知ったのはご多分にもれず「寄生獣」なわけですが、その後の連載の「七夕の国」も短編集「骨の音」「雪の峠・剣の舞」も面白く、今ではすっかり作家縛り*1になってしまった作家の一人です。
たいていの漫画家には得手不得手というものがあって、自分の得意なフィールドで戦うのが普通だ(逆に言えば作家の名前とカバーで大体の内容が想像でき、ジャケ買いもしやすい)。
しかし岩明均はいろんなジャンルを書いていて、ホラー物*2だろうと歴史物だろうと、この「風子がいる店」のような現代劇だろうと、必ず一定のレベル以上のものを仕上げてくる。うまい言葉が見つからないが、これは岩明均の「漫画力」のなせる技だと思う。
そんなわけで「風子のいる店」も面白かった。ところで初出を見るともう20年も前の作品なんだなあ。
ストーリーは吃音症(ドモり)の高校生「風子」がリハビリを兼ねて喫茶店でバイトを始め、その店や学校で起こる出来事を1話完結で綴っていくお話。風子のまわりにいる人々の暖かさや、風子が人間的に成長していく様が心地良い。障害者(ドモりって障害なのかどうかはさておき)を主人公に据えながら、変に「泣き」の展開や説教くさいお話にせず、岩明均らしく淡々と進むお話も良い。
あと岩明均で持ってないのは現在連載中の「ヒストリエ」だけだと思うんだけど、これはある程度まとまってから買うつもり。
- 余談
実は学生時代に僕が飲食店のバイトを始めたのも風子の理由に似ていて、共感できた。
当時僕は人前に出ると極度にあがってしまうタイプで、対人能力が著しく低い事を自覚していた。それを少しでも直そうと思って、敢えてその手のバイトを選んだ覚えがある。おかげで今は営業なんて対人がメインの仕事をどうにかこうにかやっているわけだ。実際、あの経験がなかったら今の会社にも入れなかっただろうし、人生は変わっていたと思う。
当時の友人達に「お前、なんか話しやすくなったね」と言われた時は内心相当に嬉しかったものだ。