しましま


しましま (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

しましま (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)


 先日感想を書いた「橙星」が面白かったので、同じ作者さんのを買ってみました。初単行本でしょうか?

 主人公の次男(つぎお)が住む「大葉屋」は、人間と妖怪のまざりもの「しましま」が住む町の雑貨屋。しましましんが住むしましま山の麓にある大葉屋は、参拝に来るしましま相手に道具を売ったり、しましま山の管理をしていました。


 でも、異常な程しましまに気に入られやすい次男はしましまの事が大嫌い。大葉屋の経営者であり、しましまに強い兄の長男(ながお)に守られたり、店の知恵袋である祝子(のりこ)にアドバイスを貰ったり、妹のみつ(みっちゃん)に振り回されたりする毎日。


 しましまの事やしましま相手の店に住んでいる事を疎ましく思いながらも、生来の性分から困ったしましまを放っておけない次男。

 今日もまた、大嫌いな彼らの面倒事に巻き込まれているようです…。

 お話はそんな具合。妖怪と人間の交流を描いたファンタジー物です。「人間と妖怪が比較的当たり前に近しい存在として相互に認識されている」という世界観は、水上悟志先生の「百鬼町シリーズ」に近いものです。あの作品では「おとなりさん」なんて言ってましたか。厳密に言えば「しましま」の方は人間と妖怪の混血ですが。

 
 さてこちらの漫画、ちょっと打ち切りっぽい感じで終わっちゃってますけど、自分は割りと楽しんで読めました。次男のお人よしな所とか、しましま神のエピソードでの「異形の哀しさ」と、それ故の「人との交わりの暖かさ」とかは、とてもツボです。


 ↓こちらは母親とはぐれた大きな子供のしましまと次男。


 
 「おおきくてこわいから」母親に捨てられたと思い込んで泣くしましまを、怖がりながら一生懸命励ます次男つぎお。良い子です。


 また、他のキャラで個人的にヒットだったのは店の看板娘(?)の祝子のりこさん。本人は「自分はしましまじゃない」と言ってますが、人形のように小さいので普通の人間ではないのは明らか。随分過去の話で村娘として登場しますので、しましまと触れ合う事で変質した霊魂のような存在なのかも知れません。

 で、何が良いって例によって「儂」とか「…じゃ」とか年寄り言葉で喋る娘だからなのですが、そのうえ祝子さんは手のひらサイズの娘っ子ときてる。更にアンニュイな目つきと和服と乱れ髪がとてもミステリアスでちょいセクシー。ちょっぴり色気のある座敷童、といった風情でしょうか。

 ↓こちらが祝子さん。

 また、次男を心配しまくる母親のような一面も持っています。ただ、彼女は別段法力や妖力を持っているわけでもないので、長男ながおのように直接次男を守ることが出来るわけでもありません。しかし逆に無力であるが故に、その存在(というか彼女の気持ちそのもの)が次男の心の支えになっていると感じました。いいねえ、こういう関係。


 そんな訳でもう少し続きが読んでみたい作品でした。ちょっと残念。

 「橙星」連載の合間に単発でちょこちょこ描いてくれると嬉しいなあ。


  • 余談

 今後売れる可能性を秘めてる作家さんだけに、偉そうですがちょっとだけ苦言めいたものを。 

 実は「橙星」でもそう感じたんですけど、惜しむらくは作者さんが「世界観をカッチリ作りすぎてる事」。いや、それ自体は悪いことではないので正確に言うと、「導入時点での説明が足りない事」。多分作者さんの頭の中では人物の設定や舞台設定がしっかりかっきり出来ているだけに、それを説明するのに追いついていないような印象を受けます。一言で言うなら「とっつきづらい」。ただ、読み進める内にお話の構造やキャラ達の役どころがわかってくると、途端に面白くなります。一読して「んー」と違和感を感じた人にはもう一度読むことをオススメします。

 それだけの手間をかける価値はある漫画と思いますので。