大好きが虫はタダシくんの

 チャンピオンで一風変わった日常系漫画「空が灰色だから」を連載している阿部共実先生による短編集。

 初っ端の2作品「乙女心」「ドラゴンスワロウ」の女子高生二人の掛け合い漫才的な所は面白く読めるのですが、それ以降は期待を裏切らない(?)もんにゃりした気分にさせてくれる短編が続きます。
 
 チャンピオンの惹句では“心がざわつく”なんて書き方をされている、この知らない内に腹の底に異物をねじ込まれた感覚は、表題作でもある最後の短編「大好きが虫はタダシくんの」で最高潮に。
 あらすじの触りだけ書くと、何か(多分いじめ)が原因ですっかりオツムがぶっ壊れてしまった女子高生と、その元親友のお話。結末はネタバレになるので言わないが、いやー……これきっついわー。

 思うに、この人の作品の「ざわ…ざわ…」感ってのはコミュニケーション不全の気持ち悪さじゃないんでしょうかね。自分が思っている事と他人が思っている事は違うし、境遇も違う。それでも人と人がある程度コミュニケーションを取れるのは、相手の意図を理解しようとする意志があるから。でもそれもなくなった場合、相手のおかしな言動や行動に人は「ツッコミ」を入れる事も出来ず、ただ気味の悪さ・後味の悪さだけが残る。丁度この短編集の中の「あつい冬」のように。

 ともあれ、「空が灰色だから」をざわざわしながらもつい読んでしまう御仁にはオススメの短編集。レッツざわざわ!