いばらの王 完結

いばらの王 (6) (ビームコミックス)

いばらの王 (6) (ビームコミックス)

 月刊誌連載だったせいか、結構長かった気がするなコレ。完結です。


 体が石化して死んでしまう「メデューサ」という不治の病が蔓延し始めた世界。未来へとその治療法を託した冷凍睡眠装置に入る事が出来たのは抽選によって選ばれた人達だけ。
 主人公の少女カスミは抽選に選ばれて冷凍睡眠装置に入るが、目覚めたときには装置が置かれていた孤島の古城はいばらが生い茂り化物が跋扈する異界へと変貌していた。カスミは大男の犯罪者マルコをはじめ、同じく睡眠装置から目覚めた人々と一緒に古城からの脱出を試みるが――。


 おおまかなストーリーはそんな所。

 カスミが抽選に選ばれた一方、双子の妹シズクは選に漏れ、自分だけが生き残ったという罪悪感をカスミが抱えている事、本当はメデューサにかかっていないのに睡眠装置に入っていたマルコの目的、古城の中で出会った少女アリス、そして奇病メデューサの本当の恐ろしさ、といった要素が絡み合って物語は進行していく。


 前半はぶっちゃけて言えばバイオハザードみたいなサスペンスホラー、後半に行くにしたがってアメリカのB級ホラーアクション映画みたいな雰囲気になります。
 出来れば前半のじっとりした雰囲気のままで謎解き→脱出といって欲しかった気もしますが(ゼウス神属とか特に萎えたなー)。

 
 まあ全体的には面白かった。岩原裕二の漫画は結構好きで、いつも読んでて思うんだけど「惜しい」んだよなー、この人の漫画。絵はすごく好みだし、世界観や小道具仕立ても悪くないのに、物語全体を通して見るとどうも説明不足というか、まとまりの悪さが出てくる。5巻のあとがきにもあるように筆者は映画がかなり好きな様子で、映画的な場面場面の作り方はすごく巧いんだけどなあ。 もったいない。
 この人は生き物のように変わる(あるいは変わらざるを得ない)長編連載よりも、構成をバチッと決めて描く短編の方が向いてるんじゃないか。


 つーわけで岩原氏の短編集。これに収録されたダークヒーロー系アクション「狼の瞳」が俺ランキングで岩原漫画のベスト。他には蛇を飼う女子高生の話「蛇」も良編。

 

狼の瞳 (角川コミックス・エース)

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