ささめきこと 3巻
<ちょっとネタバレ含みますのでサラで読みたい人は注意>
「ずっと友達でいてね?」
- 作者: いけだたかし
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2008/09/22
- メディア: コミック
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すれ違いつつも近づいていく、
3巻の前半は体育祭、文化祭といった学園物お約束のイベントに加え、ドイツからの美少女留学生ロッテちゃんの登場で二人の関係に変化が?といった具合。
で、今巻のキモは後半部分。コメディ色の強い前半に比べ、後半は一気にシリアスに。ロッテが風邪を引いた事に端を発する、純夏と汐のケンカのくだりが実に良かった。
汐は可愛い女の子が好き。そして汐の事が好きな純夏のコンプレックスは自分がデカくて可愛くない事。「どうせ私はデカくて可愛くない」という内容の独白はこれまでにも端々に出てきてはいたのですが、ある事で感情的になった純夏は、ここに至って遂にそれを烈しい言葉にして泣きながら汐に吐き出してしまいます。そして汐を傷つけてしまったと後悔し自室で泣き叫ぶ純夏。このあたりがもう凄く良い出来。普段強くて凛としてる純夏だからこそ、泣き顔が映えるんでしょうね。
本人はそんな事言ってますけど、好きで好きで堪らない人に振り向いて貰えない事を嘆いて泣いたり、好きな人を傷つけてしまった事を後悔して泣いたりする純夏は、十二分に可愛い女の子だと思います。
さて、そんなケンカを経て仲直りしたかに見えた二人ですが、今度は汐がおかしな具合に。連絡も特になく学校を休んでしまいます。
風邪を引いたかと思って見舞いに行った純夏に対し、扉を閉ざし「ほっといて」と言う汐。やがてドア越しに純夏が聞いたのが、冒頭に抜き出したセリフ。
この後の展開は自分の目で確かめて欲しいのですが、これまた気になる所で次巻へ続きとなっております。これ読んで4巻買わない奴いるのかよ!ってくらい。
さて、実は汐が純夏に対して「ずっと友達でいてね?」と言った場面が以前にもありまして、そこと今回の対比が本当に巧い。素晴らしい構成力であります。
こちらは1巻第1話。汐が好きな先輩(もちろん女子)に振られて泣いた帰り道の場面。汐は自分の同性愛趣味を客観的な視点で捉えた上で、純夏にこの言葉を言います。つまり、自分を気味悪がらないで欲しいと。友達でいて欲しいと。
1巻のこの場面でも、3巻のこの場面でも、友達としてではなく汐のことが好きな純夏は同じように胸を痛めます。しかし、この物語をじっくり読んで来た読者は、ここで当事者の純夏さえ気付いていない事に気づく事が出来ます。それは「ずっと友達でいてね?」という以前と同じ言葉に込められた、以前と異なる汐の想い。その言葉に乗せられた感情の質量は、どれだけ違う事か。3巻ではどんな覚悟を持って汐がこの言葉を言ったのか。
そこに思いを馳せると、もう本ッ当に胸がきゅんきゅんします。悶えます。
ああ、畜生。なんて良い百合話を描きやがりくださいますか、いけだたかし先生は。こうなったら4巻を震えて待つしかないじゃないか!
- 余談
1・2巻の感想のときも書きましたけど、やっぱり表紙絵は1日の時間と季節、それから劇中の時間を合わせてますね。おまけに二人の距離まで。
1巻:朝、春(桜)の表紙で劇中も春。
2巻:昼、夏(入道雲)の表紙で劇中も夏。
3巻:夕方、秋(うろこ雲と銀杏)の表紙で劇中も秋。
4巻表紙は多分雪夜の下校シーンなんでしょうけど、気になるのは二人の距離。1巻〜3巻とどんどん近づいてきた二人は寄り添う事が出来るのか、それともそのまますれ違ってしまうのか。ああ気になる。
- 過去記事