野獣は眠らず 1〜3巻

野獣は眠らず 1 (ヤングジャンプコミックス)

野獣は眠らず 1 (ヤングジャンプコミックス)

野獣は眠らず 3 (ヤングジャンプコミックス)

野獣は眠らず 3 (ヤングジャンプコミックス)


 先日の「トクボウ朝倉草平」が面白かったので同作者のこちらを探してた所、先日ようやく発見。人気で品薄なのかなー、と思ったら所謂ひとつの「第一部完!」という奴で、どうやら打ち切りのご様子。

 

 主人公は、一人の元刑事と一人の元刑務官。

 片やしがない骨董屋で働きつつも、前職である刑事の血がくすぶり続ける男「類家小五郎」。片や幽霊となってまでも悪を許せない刑務官「斎原邦彦」。

 二人の運命が絡み合ったのは、類家が刑事を辞める前日にして、斎原が生きていた最後の日。

 その日、類家はライフルを持って人質を取っていた立て篭もり犯の男を射殺した。しかし人質は既に犯人によって殺されていた。事件後明らかになったのは、人質が無罪となった極悪人であった事と、立て篭もり犯が法で裁けなかった悪に鉄槌を下した刑務官「斎原邦彦」であった事。

 類家は法に触れてまで正義を貫いた男を殺してしまった事を悔い、刑事を辞めた。

 
 しかしその一ヵ月後、骨董屋で店番をする類家を訪ねて元同僚の刑事がやってくる。曰く、現在捜査中のひき逃げ事件に知恵を貸して欲しい、と。

 刑事を辞めた類家は事件に関わらない積もりだったが、彼の身の回りに怪奇現象が起き始める。それは彼に取り憑き、正義を行おうとする「斎原」の霊の仕業だった。仕方なく調査に乗り出す類家。しかしその目にはかつての刑事時代の光が宿っていた。


 かつて一本の射線で繋がった男達。二人の悪を裁く戦いは、その日から始まった――。


 あらすじはそんな所。前述の「トクボウ」はコメディテイストの部分が大きいですが、こちらはよりシリアスかつハードボイルドかつバイオレンスです。犯罪捜査モノとはいえ、トリック部分がそんなに複雑では無い為に事件解明時のカタルシスはそれほど大きくはありませんが、代わりに幽霊「斎原」によるオカルトチックな裁き具合が山場となって目を引く仕組みになっています。そういう意味では刑事モノというよりもダークヒーロー物と言った方が良いかも知れません。3巻表紙見ればわかるとおり、斎原なんて天使羽根+死神の鎌+制服ですよ。カッコええ。


 個人的にはダークヒーロー物は大好きですので、非常に楽しんで読めました。主人公がちょっとダウナー系なのもこの頃からの芸風のようです。また、類家と斎原の日常での掛け合いがちょっと微笑ましい所と、悪党には容赦なく裁き=死刑を執行する所が対比となっており、物語にメリハリが付いています。

 荒木飛呂彦先生のケレン味(特に第3部あたりの絵柄)に影響を受けたと思われる絵柄や構図も、好きな人にとってはプラス要素。逆に表紙を見て受け入れられない人は手を出さない方が良いかと。


 冒頭にも書いたとおり打ち切りの様子ですが、個人的にはコレは大ヒット。なのに、二人の仇敵とも言える存在が出てきて盛り上がってきた所で第一部完ってんだから実にもどかしい。続き読みたいなあ。



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 →トクボウ朝倉草平 1巻 感想


  • 余談

 只今「トクボウ」連載中って事で続編が叶わないなら、逆に「トクボウ」に類家・斎原コンビをクロスオーバーで出演させるのはどうですかね。ド外道極まりない悪人に対して、草平が「行政指導、入ります」って精神的に追い詰めた後に野獣コンビが「死刑執行の時間だ」ってズバーって。

 んー、流石にくどいかな。

 でもクロスオーバーって燃えますよね。