トクボウ朝倉草平 １巻

「行政指導、入ります」

トクボウ朝倉草平 1 (ジャンプコミックスデラックス)

　
　この作者さん自体は全然知らないんだけど、表紙のトレンチコートとマシンガンと虚ろな目に惹かれて買った。表紙から「職業・殺し屋」に似た匂いがしたので。結局内容はあちらとは全然違うものでしたが、思いのほか面白くて大満足。

　主人公「朝倉草平」は警察庁の特殊防犯課（略してトクボウ）に所属する男。彼は世にはびこる悪を「害虫」と呼んで忌み嫌い、今日も悪を懲らしめていく。

　ただし彼は正義に燃える熱血漢かというとそうではなく、死んだ魚のような目で世を憂う陰気な男。口癖は「ああ死にたい」。

　そんな彼が生き生きするのが「行政指導」の瞬間。たゆまぬ訓練により鍛え上げた肉体と鋭い舌鋒で悪党共を叩きのめすやり口はまさにドＳの化身。そして「仕置き」が終わるとまた「あー死にたい」。

　そんなアッパーとダウナーを繰り返して過ごすトクボウ朝倉草平の携帯に、今日も上司から仕事の電話が入る。電話を切った後はもちろん、

　「あー死にたい…」

　あらすじはそんな所。基本は主人公のＯＮ／ＯＦＦのギャップと、その懲悪っぷり、及び悪党のリアクションを楽しむ非常にシンプルなお話です。主人公が「害虫に噛み付く事で生きてる自分も結局害虫かもな」と言っている様に、ちょっと深いテーマもトッピングされつつも、ベースはダウナー系必殺仕事人。コメディ描写のテンポも良く、実に痛快に楽しめる漫画です。

　さて、冒頭にも抜き出した通り、このお話のキモになるのが「行政指導」なる仕組。彼が属する警察庁生活安全課というのは実働部隊である警視庁とは違って犯罪捜査の矢面には立たない組織。そんな組織に属する主人公が一体どうやって悪党を懲らしめるのかと言うと…

　

　はい、良くわかりましたね。

　つまり「防犯」の名の下に「証拠が無くても好き勝手絶頂出来る超チート法律」という事です。完全にズルです。反則です。こんな素晴らしい建前を与えられた主人公はまさに「鬼に金棒」というより「キティＧＵＹに刃物」。そりゃあコンクリートジャングルに悪党の阿鼻叫喚も響き渡ろうというものです。合掌。

　ちなみにこちらは賞味期限偽装表示の和菓子会社社長に自社製品を食べさせている所。

　自社製品を食べてむせている社長に、この表情でこのセリフ。

　

　このエクスキューショナーモードの草平の目が色気があってたまりません。つーかどう見てもドＳです。本当に（以下略）

　いやー、スーパージャンプでこんな面白いのやってたんだな。知らなかったわ。続刊も買いです。