太平天国演義
- 作者: 甲斐谷忍
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2001/06
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
上の記事の「欲しいなあ」繋がりで思い出した漫画を一つ。
こちらは「ソムリエ」とか「ONE OUTS」の甲斐谷忍さんの、太平天国の乱をベースにした歴史活劇。そういえば彼の漫画では「桃源郷」と「ライアーゲーム」を紹介しましたな。シャープな雰囲気のこの人の絵も結構好きです。
強盗・殺人何でもござれの大悪党「洪火秀」が、とある偶然から小さな村の神として崇められる事になる。やがて窮民達と過ごすうちに山賊や腐敗役人などが跋扈する荒廃した時代に憤りを感じ、世の中を変えるために動き始める洪火秀。自分の為に振るってきた刃を他人の為に振るうようになった彼の元に、徐々に共鳴した革命の徒が集まっていき、それはやがて「太平天国の乱」という大きなうねりとなっていく…
あらすじはそんな所。太平天国の乱なんて教科書レベルの話しか知らないんで完全に史実に基づいているかどうかは知りませんが、この漫画相当に面白いです。
もちろんアクションシーンもあるんですが、作者が得意とする心理戦の描写が面白く、また洪火秀が狂った時代に憤る様が非常にアツくて素晴らしいです。
その中でも出色のシーンを二つほど(漫画で楽しみたい人の為に反転します)。
(洪火秀が金持ちの蔵を襲っている所を村人に見つかり、村人達に殺されそうになるシーン)
村人「(神だと偽って)だましてたのか! 死ねっ!この人殺しがっ!」
洪「なら…殺 れよ。 ただし!今までただの一遍も殺人をした事が無い者のみが俺を刺せ!」老人「ここにいるのは皆善良な農民だ。人殺しなど一人もいない」
洪「ならば聞こう!あれだけの飢えたガキ共にお前らは一体何をしてやったよ?手を差し伸べたヤツはいるか?自分の今日のメシを差し出したヤツは?剣で命を絶つ事を人殺しだってんなら…今日明日にも死ぬかもしれないってヤツに何もしてやらねえのは人殺しじゃねえのかっ? 俺は確かに今三人の門番を殺した。だが俺はお前らのように飢えた千人を見殺しにはしなかった。お前らは三人の門番を殺す人間は憎むくせに、自分が千人もの窮民を殺している事には全然気付いてねえんだよ! 俺は…俺は…あの飢えたガキ共を放っておけなかっただけだ…」
(仲間・石達開が悪徳看守に殺された妹・明藍の死に震えているシーン)
「なんで石が苦しまなきゃなんねーんだ!?なんで罪も無い明藍や薬屋のオヤジが死んでいくんだ!?腐った人間ほど生き延び、のさばり、はびこってるというのに… 狂ってる!!狂ってるよっ!!この世の中…狂ってる… なあ馮じい…あんた以前「俺には世の中を変える力がある」って言ったよな。 だったら…教えてくれ…俺に この腐った世界を変える
術 を…(
とまあ折角盛り上がってきた所(既刊3巻)であえなく休載となってしまっています。「ONE OUTS」の連載と同時進行が難しい/掲載誌自体が廃刊との噂も聞きましたが、ならばあちらが終了してから/どこか別の雑誌でも構いませんので是非再開して欲しいものです。この漫画の洪火秀の言葉はそのまま今の時代にも当てはまりますし、こういうまっすぐに物を言ってくれる漫画は今の時代でこそ必要なものだと思いますから。
というわけでこちらに投票してきちゃいました。元々未完なので実際は載せる場所と先生の描く気がないと成立しませんが…。それでも何もしないよりはマシ。塵が積もればいずれどっか別の出版社で完全版が出るかもしれません。この漫画を読んで同意される人は是非投票をお願いいたします。