ポロロッコと小さな恋のはなし

 ついこの間「ありがとう」という短編集の感想を書いたyum先生の新刊が出てましたので早速購入。こちらはネット(ニコニコ静画)で連載していたもののようです。
 
 お話としては、おしゃべりな恋愛の妖精「ポロロッコ」と、内気な少女「沙夜子」の出会いと別れ、そして沙夜子の恋の物語。

 先日読んだ「ありがとう」同様、胸にじわりと来る良いお話でした。お話自体はベタですが、見せ方が巧いのと、読者の期待を裏切らないのが実に素晴らしい。この手のベタ話は、セリフのテンポとか絵の雰囲気と言った見せ方次第で、退屈な作品にも良作にも化けるものですが、そのあたりの匙加減がこの作者さんは上手です。グッジョブ。

 「沙夜子編」との事なので、もしかして続編もあるんでしょうか。作者さんもあとがきで「もし2巻が出たら…」なんて嬉しい事言ってくれちゃってますし。

 続刊希望!

→過去記事「ありがとう」感想

  • 余談

 ここから先はスーパーネタバレタイム。未読の人は回れ右の事ヨ?

 さて、交差点で会う沙夜子の想い人の話です。クライマックスのシーンで、飴を舐めたのに彼の言葉がいつもと変わらなかった、というのがまた良い演出。

 だって「飴を舐めている間は周りの人が沙夜子を好きになる」=「それでも彼の言葉が『いつも』と同じ」=「元々彼は沙夜子が好き」って事じゃないですかッッ!!
 あ、甘酸っぺえッ!甘酸っぱいぞこいつら!こいつらに今週の甘酸っぱい大賞を与えてやりたいんですが構いませんねッ!?
 それにですよ?気付いている人もいるかも知れませんが、あの時沙夜子は飴をくわえているので、自分から挨拶をしていないんですよ?いつもの朝は沙夜子が挨拶をして、彼が小さな声で挨拶を返すのに、あの時は飴の影響で「彼が自分から挨拶をしてきてる」んです。つまり、思うに沙夜子も彼もかなりの引っ込み思案で、そのくらい小さな変化を起こすのに、大きな気持ちの揺らぎが必要って事なんじゃないでしょうか。

 いやー、悶えるわー。コレ悶えるわー。

 小さな恋の話、とくと堪能させていただきました。