BURNING BECKY −バーニングベッキー−


 表紙買い。つーかオビの野上武志先生のコメント買い。「この作家、絶対大きくなる」なんて書かれちゃあ、気になるじゃないですか。


 お話はダイエット薬の副作用で体脂肪が文字通り「燃える」体質になってしまった女子高生を描いたアクション+ラブコメディ。アメコミ風の擬音やコマ仕立てが特徴の、目新しい画面になっています。

 いろんな特殊体質の女の子達が活躍するヒーロー要素も加え、一層アメコミテイストの強いものに。


 結論から言うとそこそこ面白かったのですが、それだけにちょっと気になった部分を一つ。

 それは、残念ながら「アメコミ」という文脈に慣れていない人にとっては、擬音の読み方すらわからない事。もちろん画面と効果線を見れば大体の想像はつきますが、それでも英語のオノマトペを日本語のそれに置き換える作業はそれだけで脳の負担になります。ぶっちゃけて言うと読むテンポが悪くなります*1

 キャラクター仕立てやテンポは決して悪くないので、より「惜しい」気がします。


 引き続きエラソーな事を言わせていただきますと、アメコミという表現に固執しすぎている気がします。同じくアメコミ風の擬音を使う漫画家と言うと真っ先に思いつくのが小林源文先生・近藤和久先生なわけですが、あちらの場合は戦闘シーンの雰囲気を出すために使っている事が多く、そんなに読むのに引っ掛かったりする事はありません。要は擬音自体はそんなに重要度が高くなく、雰囲気を出すための飾りの一つなわけです。

 逆に本作品の場合は学園モノをベースにしたアクションラブコメ、つまりストーリー性の強いものになっているために様々な擬音がどんどん登場し、更にそれらの意味を理解しない事には先に進めません。


 アメコミと日本マンガの融合を狙っているというのは良く分かりますし、その意気込みも伝わってくるのですが、読みやすくなくては読者もついてきません。巧い言い方が見つかりませんが、「アメコミの良い所を日本マンガに取り入れる」んじゃなくて、「単にアメコミに寄って行ってる」気がするんですよね。

 「アメコミが大好き!」「アメコミを日本にも根付かせたい!」という情熱は良く伝わってきて、そのあたりは非常に好感が持てるのですが、ともすればそれがアメコミのプロパガンダにも見えてしまうのが残念。やっぱりマンガってのは「面白い事」が大前提で、表現方法はその一部でしかないですからね。


 面白い方向性を持った漫画家さんでしたのでつい苦言をつらつらと書いてしまいましたが、まだ1冊目の単行本との事。


 今後「お話として面白いよ!」「こいつはアメコミ風の表現じゃないと成り立たないよ!」ってマンガをビシッと見せてくれたら嬉しいです。


 2作目以降にどんなものを見せてくれるのか楽しみです。


  • 余談

 アメコミの良い所を巧く取り入れてる漫画家さんって言うと、久正人先生、熊倉裕一先生、小川雅史先生あたりでしょうか。

 ウイットに富んだセリフ回し、画面のメリハリ、物語のハッタリ、キャラの見得の切り方という視点で見て、今一番アメコミに近いのはやっぱり久正人先生の「ジャバウォッキー」。コレ、今すぐ英訳して出版しても即売れるよ、きっと。

 つーか再開熱望。

*1:自分が細かい事を気にする性格、ってのもあるんですが