となりのネネコさん 3巻


「あたし達だけは味方だよっ」
 

となりのネネコさん (3) (ウンポコ・コミックス)

となりのネネコさん (3) (ウンポコ・コミックス)


 ネコ顔の少女「ネネコさん」を軸に描かれる、笑いあり感動ありの恐ろしく完成度の高い学園コメディ、第3弾。概要は過去記事を参照してください(オイ)。

 やー、いつの間にか3巻出てたんですねえ。本日店頭で見つけて狂喜でございましたよ。自分にとってファースト宮原インパクトがこの漫画だったって事もあり、宮原作品の中ではやっぱ「ネネコさん」が一等好きです。

 人と人との出会いがもたらす心情や関係性の変化を、「笑い」と「良い話」を塩梅良く配合して描き出すのはどの作品でも変わらないのですが、「恋愛ラボ」がコメディ寄り、「みそララ!」がお仕事漫画寄りで2作品とも基本コメディ4コマ漫画なのに対し、「ネネコさん」はしばしば4コマから逸脱してドラマパートを丁寧に描くのが良いです。しかもそれが中学生時代の楽しさや痛みを思い起こさせる作りになっていて、読んでいてしばしば胸がじんとします。

 今まさに中学生の人にも、かつて中学生だった人にも強力にオススメする傑作。まっこと良い漫画です。



 さて、ここから先はネタバレ有り有りの感想。サラで読みたい人はご注意下さい。


 3巻は前巻から続きの犬飼麻智編のクライマックス、及びネネコさん含む茶道部の面々が吉川さん宅へ行くお話がメイン。

 で、もう何と言っても麻智編の終章と後日談が物凄く良かったです。お前はスタープラチナか!っつーくらい心臓鷲掴みにされましたわ。ハンカチの場面から始まる麻智の心情の吐露の場面、及び麻智の小学校編で、計2回も落涙に及んでしまいました。

 麻智編ってのは要約すれば「友達を装った共依存関係の崩壊」で、そのトリガーになってるのがやっぱりネネコさんなんですね。そこでキーワードになってくるのが「あたしたちだけは味方」って言葉で、それは麻智の友達二人(しーちゃんとゆーちゃん)と麻智を「(一見)友達」という関係に縛り付ける、お互いにとって免罪符のような言葉だったわけです。

 そしてネネコさんの言葉でその関係の歪さに気付き、泣きながら本当の気持ちを吐き出す場面が絵・台詞のリズム共に素晴らしい出来でした。気弱娘が勇気を振り絞って言葉を紡ぐ様は本当に魅力的。ぐいぐい引き込まれます。

 でもって過去編でもう一度「あたしたちだけは味方」という台詞を使い、それがまだ呪いの言葉でなかった時代を描くのがまた堪らなく良い。この過去編で3人の関係性が最初から歪だった訳ではない事を描き、更にこれから3人が本来の関係=友達に戻る事を予感させる余韻を残しています。や、もうニヤニヤが止まらないほどに構成が巧いです。

 ああ、そういえばもう一つの後日談「やじまち」編も良かったなあ。甘酸っぱい喃、甘酸っぱい喃。


 で、麻智編の間に挟まれてる山田とネネコさんの場面も相当にヤバい。1巻でも垣間見えていましたが、山田の良い所ってのは「受け入れる強さ」だと思うんですよ。ネネコさんが身体的・精神的にヒトとは一線を画した強い存在=異形として描かれているのと対照的に、山田は至って普通の女の子。でもそんな普通の人に受け入れられる事こそがネネコさん=異形にとっては凄く重要で嬉しい事なんだろうな、と思うと堪らなく切なくて暖かい気分になります。


 いやー、というわけで宮原式中学生日記を存分に楽しませていただきました。しかもこれが全然説教臭くなくて、コメディを交えつつも丁寧に暖かく描かれているのが本当に気持ち良いです。

 人と人との衝突を描いても、根っからの悪人を描かない所が良いんでしょうか。とにかく読後感がこれほど清々しい作品も珍しいです。ワタクシすっかりファンになってしまいました。


  • おまけの戯言

 3巻のP.53でもそうですし、1巻P.15、P.66、P.88や2巻P.69でもそうなんですが、山田とネネコさんの重要なドラマパートって必ず夕方なんですよね。「青春には夕焼けが良く似合ふ」ってのもあるんですが*1、もしかしたら夕方=逢魔が刻って意味も込めてるんじゃないでしょうか。人と異形の中間であるネネコさんと、人である山田花との触れ合いの時間。毎回この場面が綺麗で暖かくて、凄く胸に沁みます。これらの場面でもネネコさんはいつも通り無表情だけれど、彼女の頬はきっと、西日が照らす分より少しだけ余分に暖かいんだろうな、なんてセンチな事を思ってしまうほどに*2


  • 過去記事

 →となりのネネコさん 1.2巻感想

  • 関連記事

 →恋愛ラボ 1巻 感想

 →恋愛ラボ 2巻 感想

 

*1:今さらっと臭い事言った

*2:今さらっと凄く臭い事言った