空色動画 3巻
「創作は本っっっ当に楽しい!!!!!!」
- 作者: 片山ユキヲ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/04/23
- メディア: コミック
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うおォン!まさかまさかの最終巻!早すぎるよう。オビ裏で雷句先生も仰ってますが、もっと3人娘の青春を見たかったなあ。
さて、最終3巻は文化祭編のクライマックスと、ストリートアートのチーム「狩生派」とのアートバトル編、及びエピローグまで。今巻も作る事の楽しさや3人娘の喜怒哀楽がぎゅうっと詰まった、実にステキな出来でした。やっぱいいわあこの漫画。
以下はネタバレ含む感想。未読の人は回れ右して本屋へゴー。何かを「つくる」事が好きな人なら、きっと楽しめる良作です。
<文化祭編>
前巻に引き続き文化祭のお話。1−Aのアニメ上映に反対する校長を出し抜く校内での追いかけっこ場面、体育館でのゲリラ上映、そしてアニメ上映後の大喝采がたった1話に凝縮されています。
文化祭編は長めのエピソードなので普通ならクライマックスで2〜3話使って描く所を、敢えて1話で描く事でスピード感と祭りの熱気をダレる事無く魅せています。巧いなあ。
でもって何が良いって、最後に3人娘と1−Aの面々が観客から大喝采を受ける場面ね、これがもう凄く良い。思えば第1話でヤスキチがメモ帳に書いた1本のパラパラ漫画、あれが全ての始まりなわけですよ。それがジョンとノンタを動かし、そしてその3人が作ったアニメがクラスの皆を動かし、そして文化祭でのクラス一丸となった作品とその大成功へと繋がります。ああもう、なんて清々しくて気持ち良い展開。
辺りはばからず「青春万歳!」と叫びたくなるほどの名場面。思わず目頭が熱くなりましたわ。
<レト編>
さて大盛り上がりの文化祭編の後は、女子高生「レト」率いるストリートアート集団「狩生派」と3人娘とのアートバトルを描いたエピソード。
「創作とは心に闇を抱え、悩み苦しんでこそ」産み出されるものとして、自分を厳しく縛り付けていたレト。狩生派として仲間とつるみながらも、孤独な影を抱えていた彼女を救ったのは、3人娘の自由な発想力と情熱でした。
ジョン・ノンタ・ヤスキチのパワーはその何倍もの人数の「狩生派」の面々に刺激を与え、最終的にはレトを動かし、そして両者の良さを融合した傑作は、今までの「迷惑な壁の落書き」ではなく「アート」として町の人々に受け入れられます。
そして創作の楽しさを思い出し、ラストシーンで年相応の笑顔を見せるレトは本当に魅力的。
<エピローグ>
そしていよいよ最終話。ここではアニメ製作を続ける3人娘と1−Aの面々、そしてネットを通じて彼女達の作品がアチコチの人々の心に「やろうよ!」「やってみようよ!」という火を灯す様子が描かれています。
まさにこの漫画のテーマを凝縮したような素晴らしい話でした。
いやー、良かったです。正直全3巻で「すわ打ち切りか?」と思ったものの、綺麗に締めてくれました。誠にグッジョブであります。
では作品全体についてまとめの感想を少し。
この漫画の良さってのは、前回の感想でも書いた通り「生きている創作物」の素晴らしさだと思うんですよ。言い換えると「生きている嘘」というか。
この漫画の基本展開は「作る事の楽しさ、皆で頑張る事の楽しさが作品に宿り、それを見た人々にどんどん飛び火していく」というもの。
アニメや漫画なんてのは大概がフィクション、つまり絵空事です。でもその「嘘」によって生まれた感情・情動は、現実世界に生きている我々の中に確かな温度を持って存在しています。これは当ブログで何度も何度も書いている繰言なんですが、この漫画はそれを「女子高生のアニメ制作」という舞台設定の中で実にわかりやすく、暖かく、清々しく描ききってくれました。それがたまらなく気持ち良い。
ジョンとノンタとヤスキチの作品が1−Aや狩生派の人々を、ネットの向こう側の人々を動かしたのは何故か。「空色動画」というこの漫画作品が読者の心に暖かいものを残すのは何故か。前回の感想と同じ事を書きますが、それは作品に創作者の命が吹き込まれているからに他なりません。
時代が流れて表現方法が変わっても、所詮は伝える媒体が変わったというだけの事。創作者と受け手との間にあるバトンの形が変わったというだけの事。創りたいという想い、創るのは楽しいという想いが宿った「生きた嘘」が現実を動かし、そしてまた素晴らしい「嘘」を産み出すという連鎖は、千年の昔からこれっぽっちも変わっておりません。
良く出来た「生きた嘘」は、人を生かす事が出来る。人の心に火を灯す事が出来る。そしてそれを産み出す「創り手」は、賞賛されこそすれ決して否定される者ではありません。
漫画やアニメが趣味・仕事だ、なんて言うと未だに偏見の目で見られる事がある昨今。この作品は、彼らが「
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