異邦人たち 1巻
- 作者: 三等兵
- 出版社/メーカー: フォックス出版
- 発売日: 2008/11
- メディア: コミック
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Webで連載してる三等兵さんの格闘漫画。
ネットの方でチラチラ見てて「ああ、面白いな」、と思ってましたけど単行本になるとは。これは嬉しい。
お話としては格闘家の少女「竪岡梢」とその父親「竪岡元治」の物語。ざくっとしたタッチで描かれる格闘シーンは一瞬の動きを絵画のように切り取った美しさ。板垣先生が餓狼伝で描く格闘シーンを魂のぶつかり合う「熱」と表現するならば、こちらはひどく峻厳で危うい殺し合いの「冷気」を含んでいます。
「異邦人たち」というタイトルの通り、このご時世に好き好んで闘いの世界にいる彼等を日常世界から見て埒外の者=異邦人として描いているのでしょう。
そんな中で軸になるのが主人公の梢と父親の元治の関係。歪ではありながらも父娘として互いが互いを想う様子が、彼らに残された人間性を見せてくれるようで、暖かくも少し哀しい雰囲気を出しています。
で、この人の漫画で自分が一番好きなのが台詞や絵のテンポ。こういう淡々と静かに語られる、ちょっと芝居がかった台詞回しってのは好きです。メリハリの効いたコマ運びも。
例えば梢の一時の逗留先となった松岡道場の総帥との一場面。
<以下台詞抜粋>
いいんですか?…不用意に手を取って 「おじさま」
(中略)
私の手はあなたの手を引いて この淵の中に
このまま引きずり込んでしまう …かもしれないのに…それなのに
こちらは松岡の投げで池に落とされた梢が、彼の助けの手を取って言う一連の場面。前後を読むとわかりますが、こちらは現在の状態を話していると共に、「異邦人=異常者」である自分を受け入れてくれるのか、という梢の問いかけでもあるわけです。こういう、重要なシーンで「くっ」と重心を落とす所が好き。んでまた、梢の問いに対する答えをとある行動で表現する総帥がまたカッケー。ナイス爺様であります。
独特の雰囲気を持った、ちょっと毛色の変わった格闘漫画です。続刊も買い…だけど、いつ出るんだろう?コレが出るまでに結構かかってるみたいだし、心配。4コマ漫画系のおかげで待つのは慣れてるんで、年1くらいで出てくれると良いのですが。さて。
- 余談
ちなみに個人的に一番お気に入りなのは「松原俊一」。一見眼鏡の優男ながら、その実完全に壊れてて超強くてマイペースでサディスト。格闘家というよりは闇の住人。属性は多分DARK−CHAOSです。
こういう人として大事なネジが1本抜けてる代わりに曲がったネジが2本ぶっ刺さったようなキャラは好きです。物語をかき回してくれそうでワクワクします。