ホームセンターてんこ 2巻


 

ホームセンターてんこ(2) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

ホームセンターてんこ(2) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

 ハンドクラフトにハマってしまった女子高生「井本典子いもとのりこ(通称てんこ)」と、そのバイト先であるホームセンターの青年「テンコー」の二人を主人公にしたモノ作り漫画、第2巻。

 手を動かす事が大好きな自分にとって余りにもストライクな漫画なので1巻を読んだ時には手放しで褒めてしまったのですが、2巻でもその楽しさは健在。「つくること」の楽しさが画面からビンビン伝わってくるのと同時に、2巻ともなると脇キャラにも愛着が沸いてきて作品世界の魅力が増してきています。いやー、これはいい。

 
 で、2巻まで読んでふと気付いたんですけど、この漫画の巧い所って典子を初めとしたクラフト初心者が見せる「敷居の低さ」なんじゃないかなー、と思うわけですよ。その辺が読者の工作マインドを刺激してくれるから、より面白く読めるんじゃないかと。

 ちょっとその辺を説明してみます。


 例えばこちらは第7話で親子工作教室でお父さん達が作った木製の昆虫達。

 


 もう一つ。こちらは第5話でてんこ達が作ったシルバーアクセ。

 

 
 自分で手を動かす人ならわかると思いますし、もちろん敢えてそうしているのでしょうが、見ての通り二つとも物凄く巧いわけではありません。既製品のようにカッチリした物ではなく、むしろ手作り感溢れる造形です。
 これ、言い換えるなら「ちょっと頑張れば作れるんじゃないか」と思わせるレベルの造形物なわけです*1

 例えば1巻でテンコーが作るタンスは「技術と発想」が必要なプロの仕事で、すごいなぁと感心する事はあっても、自分でやろう・作ろうとする所までは中々行きません。
 ところがお父さん達やてんこのようなクラフト初心者には充分な「技術」がありません。でも「手を動かす根気」と「発想」さえあれば、こういうものがすぐに出来るんだよ、と言うのが明確な言葉ではなくストーリーの流れでわかるようになっています。結果、工作マインドを持っている(あるいは隠し持っている)読者は「ちょっと手を動かしてみようかな」「久しぶりに何か作りたいな」という衝動にかられてしまうのです。この辺が実に巧い。

 最初に書いた「敷居の低さ」ってのはそういう事で、コレが逆にテンコーの作る凄い技術の造形物ばっかりだったらここまで面白くはならないと思います。初心者がモノを作る過程とその作品を見るからこそ「やってみようかな」というドキドキや「自分だったらこうするかなー」とワクワクする気分が沸いてくる。それがもう読んでて非常に気持ち良い。

 料理漫画に例えるなら「クッキングパパ」と「天体戦士サンレッド」のおまけ漫画「ヴァンプ様のさっと一品」の違いとでも言いましょうか*2


 「誰だって最初は初心者。どうせなら簡単・お手軽な所から入っていって、つくることの楽しさを知って欲しい」そんな作者の意図を感じる、実に良い工作漫画です。

 一般受けはしないかもしれないけど、これは長く続いて欲しいなア。

  • 過去記事

ホームセンターてんこ 1巻感想

 

*1:そういう意味で1巻では絵で見せていた完成品を、2巻からは写真に変えたのは大正解。写真の方が粗が目立つから

*2:わかりにくいですね。すみません