二隻の舟

おまえとわたしは たとえば二そうの舟

暗い海を渡ってゆく ひとつひとつの舟

互いの姿は波に隔てられても

同じ歌を歌いながらゆく 二隻の舟

敢えなくわたしが 波に砕ける日には

どこかでおまえの舟が かすかにきしむだろう

それだけのことで わたしは海をゆけるよ

たとえもやい綱は切れて 嵐に飲まれても

おまえの悲鳴が 胸に聞こえてくるよ

越えてゆけと叫ぶ声が ゆくてを照らすよ

きこえてくるよ どんな時も

難しいこと 望んじゃいない

有り得ないこと 望んじゃいないのに

風は強く波は高く 闇は深く星も見えない

風は強く波は高く 暗い海は果てるともなく

風の中で波の中で たかが愛は木の葉のように

わたしたちは二隻の舟 ひとつずつの そしてひとつの

わたしたちは二隻の舟 ひとつずつの そしてひとつの

 
 以上、中島みゆきの「二隻の舟」より抜粋。


 先日、遠くへ行ってしまう知人の送別会で歌いました。本当に良い歌です。人と人の絆の儚さと確かさを、これほどまでに熱く優しく謳い上げる曲を僕は他に知りません。

 
 ひとつの曲で8分は長いと思われるかもしれませんが、未聴の人は是非一度聴いてみてください。

 
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 この一つの歌が一体何人の孤独を癒してきたか。この8分間が一体その何倍の時間の孤独を癒してきたか。

 
 ヤバい時に聞くと泣けて堪らない歌です。そしてヤバい時にこそ聴く歌。


 「存在する」という事実、あるいは「姿が見えなくても存在を認識できる事」は、時にどんな言葉よりも勇気を与えてくれます。


 自分がここにいる。あの人はあそこにいる。ちっとばかしキツい事もあるだろうけど、だから、きっと、大丈夫。