PUNISHER 1・2巻
- 作者: 佐渡川準
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2008/07/08
- メディア: コミック
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「無敵看板娘」の佐渡川準先生の新作。今回は前作と一変して冒険ファンタジーものです。
父の形見の大剣を背負った少年「アルト」は旅をしていた。目的は父が何者かに殺された事を遠方に住む母親に伝える為。彼の旅は突然父を失った事で呆然としたまま選択された受動的な行動。従って、彼の旅には輝く夢も無く、燃える野望も無かった。
死神の鎌のような武器を持った少女「ミルキィ」は旅をしていた。目的は生ある者の終わりを司る神「死神」になる為。明るく前向きな彼女は、しかしその肝心な「死神になる方法」を知らない。従って、彼女の旅には明確な道筋が無かった。
現実に打ちひしがれ夢を見なくなった少年と、夢を見る余り現実を見失いがちな少女。
ある日、一見正反対の二人は出会い、共に旅をするようになる。
それが世界の運命を握る鍵とは知らずに――
あらすじはそんな所。「無敵看板娘」で培われたコメディ部分のノリはそのままに、冒険のロマンと戦闘アクションを盛り込んだファンタジー漫画です。
個人的には佐渡川センセの絵もギャグ部分のテンポも大好きなので楽しんで読めるのですが、単純にファンタジー物という枠組みだけで捉えると、大いなる先達が多すぎてちょっと見劣りするのは仕方の無い所。むしろ、ヒットした前作を踏襲した日常ご近所コメディではなく、敢えて新しいフィールドに切り込んでいった姿勢をこそ評価すべきかと。
2巻までを読む限り、旅を完遂するという決意以外に夢も希望も無いアルトが、振り回され役でいながら真っ直ぐで強い芯を持っている事と、「死神になる」という夢に対して前向きで楽観的なミルキィが、心の奥底に暗い過去と欲望を抱え込んでいる事を対比して描いていく方向のようです。色に例えるなら、一見黒に見える白(=アルト)と、一見白に見える黒(=ミルキィ)、といった所でしょうか。
また、「アルトの父親が殺された理由」「形見の大剣の不思議な力」「ミルキィが死神を目指すようになった過去」「彼女が魔法を使える理由」などなど、伏線もいくつか張っているようです。ただ、正直あまり小出しにしないで、3巻あたりからは伏線を回収しつつ新たな伏線を張る、という作業を始めて欲しいです。冒険物の醍醐味って、「そうだったのか!」の次に「でも新たな謎が!」のサイクルだと思いますので。
2巻まででは、物語にのめり込んでいきたい所をそういった謎が阻害している、という印象を受けました。自分は主人公達の意志や立ち位置がしっかり見えて無いと、今ひとつ感情移入できない性質なので…。
ただ、前述したようにこの人のギャグのテンポや勢いのある描線はすごく好き。ミルキィの心の闇の描写もヒロインだからといって遠慮する事無く描かれていて良い感じです。
ちょっとしたきっかけで格段に面白くなる匂いがしてるだけに、3巻で化ける事が出来るかどうか要注目。
剣と魔法と世界の運命とボーイ・ミーツ・ガール。そんな王道少年漫画をどう魅せてくれるのか。
期待してるぜ佐渡川先生。