ミカるんX 1巻


「合体&巨大化 略して――合大!」

ミカるんX 1 (チャンピオンREDコミックス)

ミカるんX 1 (チャンピオンREDコミックス)


 巨大な異星人が東京に現れた時、女子高生「鯨岡ミカ」と「南るんな」は合体して巨大な美少女戦士「ミカるんX」となり、異星からの脅威に立ち向かうのだ!



 …全裸で。


 何この漫画。設定からして面白すぎる。高遠先生の頭の中は一体どうなっているのか(良い意味で)。「CYNTHIA_THE_MISSION」で魅せた格闘の躍動感と「SCAPE−GOD」で魅せた特撮ヒーロー物のロマンを、まさか全裸で出力するとは思わなかった。この人の漫画はいつも想像の斜め上を行くから大好き。


 裸とか格闘とかは見てて楽しく、前述の2作に比べるとかなりアクション+コメディ寄りに描かれているようで、より娯楽色の強い作品になっています。ただ、この人の事ですからそれだけじゃ終わらんだろうなあ。この人の漫画の「次は何をしでかしてくれるんだろう」ってワクワク感は堪らないものがあります。

 こりゃー続刊も買わざるを得ません。


 そこかしこに仕込まれたパロディも決して本筋をジャマする事無く、分かる人だけがニヤリと出来る程度に仕込まれてる絶妙な匙加減。

 例えば、自分がタイトルを初見で「ミカるんX(エックス)」だと思ってたら「ミカるんX(クロス)」で、ちょっと考えたら「あー!バロム1か!」とか。「でも変身するのは友情パワーじゃなくて魔法のブレスレット(略してマブ)の力だよな…」とか思ったら「あー!マブ友達(ダチ)か!」とか。細かい所まで仕込みすぎですよセンセ。


 それではまともなレビューは他のブログ見てもらうとして(オイ)、無粋とは知りつつもわかる範囲で元ネタでも探ってみましょうか。


・「ミカるんX(クロス)」…前述の通り特撮ヒーロー「超人バロム・1」から。男の子2人が腕を組んで「バロムクロス」すると変身する。友情エネルギーが力の源のため、仲が悪い時は変身できない。ちなみに原作はさいとう・たかを先生。


・表紙見返しの夕日に向かう二人のシルエット…ウルトラマンAとヒッポリト星人。…多分。


・聖アグリッパ学院…ルネッサンス期の秘教学者コーネリウス・アグリッパから。ちなみに「ピルグリム・イェーガー」には本人さんとして出てきます。


・聖アグリッパ学院の校舎の形…エヴァアクエリオンのお陰でオタクにはお馴染みの生命の樹(セフィロトの樹)。自分はメガテニスト故。ちなみに校舎入り口は現世を現すマルクトの位置にある。


・第三話タイトル「ミナミと山の手」…「ウルトラマンA(エース)」から。エースは北斗星司と南夕子という二人の男女が合体して変身する(後に北斗のみ)。北斗星司→北斗星寝台特急)→電車→山の手線。タイトルの「ミナミ」が敵の関西弁星人と南るんなの二重の意味で、「南と山の手(ミカ)」で変身する…っという事で。ちょっと無理があるかな…?


・第三話P.92Pるんなのセリフ「うう、テリブル東京」…「リングにかけろ」から。東京を描写するシーンで車田正美先生が生み出したステキワード。件のシーンでは「オー、テリブルトーキョー!」と2・3回繰り返され、田舎者の子供達に「東京は怖い所だ」という先入観を植え付けた。


竹取物語(P.100、P.135)…古典の阿倍野明路先生*1が教えていた教材。前述のウルトラマンAと関連付けて考えると、エースの片割れである南夕子の正体がかぐや姫と同じく月星人なので、ちょっと引っ掛かる。とんでもない再生力あるし、もしかしたらミカの正体は異星人って事の暗示かも。

 (08年4月24日追記→)…って良く考えたら「るんな」→「ルナ」の方が可能性高いですね。P.175のヒミツさんのセリフとか、日本海フォームが月とウサギをモチーフにしてる所とかもキーになってる様子。我ながら相変わらず脇が甘いのう。


・第五話タイトル「力と技」…「仮面ライダー」から。「技の1号・力の2号」というフレーズがある。また1号と2号に改造手術を受けた仮面ライダーV3は二人の「力と技」を受け継いでいて、ベルトの風車も2つある。「ミカるんX」では日本海フォーム(るんな)が技・呪文系で、ミカフォーム(ミカ)がパワーファイターって所。


・「だったらイケる」とか「合体承認!」とか「くぱぁ」とかの基本オタワードは流石に気恥ずかしいんで省略。


 自分も修行が足りないクチなんで、まだまだ掘り出せばあるんだろうなー。

 
 とか何とかパロディや元ネタ探しをしなくても十二分に面白い娯楽作。また一つ続刊が楽しみな作品が出てきました。

 

*1:おそらく陰陽師安倍晴明」が元ネタ