マルスのキス
- 作者: 岸虎次郎
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2008/02
- メディア: コミック
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表紙買い。岸虎次郎センセの漫画読んだ事無かったし、表紙の眼鏡っ娘に惹かれたんで。赤のセルフレーム眼鏡に厚い唇、逆光。完全に表紙だけでやられてしまった。
主人公は美希と由佳里という二人の女子高生。美希は黒髪ストレートで眼鏡をかけた優等生、由佳里は茶髪ショートカットで彼氏もいる今時の女の子。一見正反対に見える二人だが、ある日由佳里は美術室でマルス像に独りキスをする美希を目撃してしまう。
その日から美希の事が気になり始める由佳里。やがて「マルスのキス」という秘密を通じて言葉を交わすようになった二人は、意外にも息の合った友達になる。
恋愛に疎い美希に体験談を話す由佳里。誰も聞いてくれなかった由佳里の悩みを真摯に受け止める美希。
互いの足りない所に惹かれ、仲良くなっていく二人。
しかしある日、由佳里は気付いてしまう。友情を超えた感情を、目の前の女の子に抱いている事に――
あらすじはそんな所。
小説の掌編が元になっているようで、内容としては特に深い描写もなく、割と短時間で読めてしまいます。
しかし岸先生の画力が実に素晴らしく、主人公の二人が非常に魅力的。一見優等生の美希にも、彼氏がいて友達と談笑してる由佳里にも、それぞれの悩みがあって、読み進める毎にだんだん二人に血が通ってきます。
そして何より特筆すべきは作者の唇の描写。怒ってる唇、笑ってる唇、拗ねてる唇、そしてキスしてる唇。どれもこれも強力な引力を感じます。唇でここまで感情を描き分けられる漫画家さんってそうそう多くない。そもそもこの人の描く唇って、厚ぼったいのに過剰にエロくはないんですよね。しかしほどほどにエロい。瑞々しい、という方が伝わるでしょうか。とにかくこの漫画のキスシーンは必見。至上のキス描写であります。
また、内容の方は先ほど「短時間で読めてしまう」とは言ったものの、決してつまらないわけではありません。むしろ読後感の良い恋愛話に仕上がっていました。あらすじを読めば解るとおり主人公は由佳里なんですが、中盤までは眼鏡っ娘美希の純情な反応や素直な性格が繰り返し描かれ、「やっぱり黒髪眼鏡は良いなあ。このまま眼鏡っ娘が主人公で良くね?」とか思ってしまいます。しかし中盤以降は怒涛の由佳里プッシュ。つまり前半部分は美希の事を好きになっていく由佳里の視点で読者は物語を読まされてるわけですね。なんという巧みな罠。ナイス構成。
さて、もちろん後半で何が起こるかは言いません。ただ、さっきも書いたとおり大変な事になります。簡単に言うと由佳里がとんでもなく可愛くなります。そもそも古今東西、こと「可愛い」というフィールドに関しては、恋するオトメはいつだって無敵です。そしてそれを真正面から描き切る画力。実に素晴らしい。
いやー、いいもの見せてもらいました。眼福眼福。