ジジジイ-GGG 1巻


「今日はいい日だ」

ジジジイ -GGG-(1) (モーニング KC)

ジジジイ -GGG-(1) (モーニング KC)


 その泥棒についてわかっている事

・通称は「ハープ」。
・とにかく超健脚。恐るべき逃げ足と跳躍力を持つ。
・トレードマークは帽子とハイテクシューズ。
・バナナが大好き。
・変装も得意。演技も出来る。
・本当の年齢は70歳。

・盗むものは、心

 ドロヘドロ風に概要を書いてみましたがどうですかお客さんそうですかお客さん。


 表紙の惹句「快足快盗」「盗むものは、心」に惹かれて買ってみましたが、これが予想以上の出来。非常に面白かったです。


 泥棒が主人公とは言っても「ハープ」は義賊のような存在で、盗まれた絵を取り返したり企業の悪事を暴いたりします。で、それが「世の為人の為」っていうよりはむしろ「依頼人に興味を持ったから」みたいな動機だから面白い。普通、義賊って言うとどうしても「自己犠牲」的なイメージが付きまとうのですが、「ハープ」は自分の心の思うまま―ある意味面白半分で―行動して、結果としてそれが依頼人の笑顔に結びつくのが見ていて非常に気持ちいい。まさに「快盗」と呼ぶにふさわしい。


 この作者さんの漫画は初めて読んだけど、この漫画で「良いなあ」と思ったのは「目」。主人公のハープは70歳にもかかわらず、言動も行動もまるで子供みたいで、その目も子供の目みたいにキラキラしてる。特に盗みをするときの不敵な笑みと来たら、まるっきり「いいこと」を思いついた時の悪ガキのそれだ。

 そこで気付いたんだけど、ハープってのはもしかしたら70歳の老人じゃなくて、70歳の少年なんじゃないか。確かに大人の知識や含蓄のある台詞もあるけれど、基本的には少年のままで生きてきたんじゃないか。つまり少年歴60年というわけだ。なるほど、それほど年季の入った少年ならば、我々中途半端な大人が最初っから敵うわけが無い。その純粋な好奇心と真っ直ぐな目と素直な心に触れ、簡単に打ちのめされてしまうのがオチだ。


 作中では絵画もデータも盗んでる癖に「盗むものは、心」と銘打つこの作品。蓋を開けてみれば何の事は無い。盗まれたのは読者の心だった、という仕掛け。ここまで見事に盗まれると最早膝を打って笑うしかない。


 これだけ読後感の清清しい作品が世に出た事に感謝。迷わず続刊も購入決定。