岳 1・2巻

 
 

岳 (1) (ビッグコミックス)

岳 (1) (ビッグコミックス)

 
岳 (2) (ビッグコミックス)

岳 (2) (ビッグコミックス)

 山岳救助を生業とする「島崎三歩」の日常を描いた物語。救助ものと言っても「め組の大吾」や「トッキュー!!」のようなドラマチックなものではなくて、山岳という厳しい条件下での生と死の淵を描いた暖かいヒューマンドラマに仕上がっている。

 このマンガの素晴らしい所は要救助者が必ず助かるというわけではない事。時には三歩の救助が間に合わなくて死んでいたり、救助したものの力尽きて死んでしまったり、時に一人を助けるために一人を置き去りにしたり。ただ、それは単に悲劇が好きで「良い」と言っているわけではなくて、「山の人々」を正面から描こうと思ったら避けて通れないモノをきちんと描いている作者の真摯な姿勢が、読んでいて非常に気持ち良いのだ。

 山という非日常の世界で時に生き、時に死ぬ人々。彼らに向けられる作者(=三歩)の眼差しはおそろしく冷徹であり、それ故にとても優しい。

 このマンガを読んでいてひしひしと伝わってくるのは「山ってのはさ、こういうもんだよ」って事。寒くて、危なくて、冷たくて、暗くて、心細くて、素晴らしい。

 自分は命の危険が高い登山はしないヌルーい登山者(ハイキングか?)だけれど、このマンガを読むとどうにも足がうずうずしてきてしまう。

 少しでも山に惹かれている人には二重丸でオススメのマンガです。