ピコピコ少年

ピコピコ少年

ピコピコ少年

 ゲームと密接な関係にあった押切蓮介先生の少年時代を描いた自伝漫画。

 短編集の「おばけのおやつ」にも2編だけ載ってて、「あ、これいいなあ」と思っていただけに、この度の単独単行本化は嬉しい限り。


 内容は期待通りの面白さ。50円筐体とか駄菓子屋とか秘密基地とかファミコンのアダプターを親に隠されるとかPCエンジンとか100メガショックとか初代ゲームボーイとか、30歳前後のハートを正確に撃ち抜く描写てんこもりで非常に楽しく読めました。


 で、そういう細かい懐古描写ももちろん良いんだけれど、この漫画で一番良いのは、ゲームという共通言語を通して友情とか恋愛とか青春の鬱屈とかをきちんと描き出している所。

 中でも出色なのは秘密基地を舞台に描かれる、押切少年とその友達二人の確執を描いた「秘密の城少年」という一編。友達と秘密基地を作る楽しさ、そこで遊ぶ楽しさ、そしてゲームボーイという存在と秘密基地の崩壊をキッカケに発生する人間関係の悪化と破綻。

 このエピソードは十二分に、あの全部「むき出し」で思い切り楽しんだりムカついたり後悔したりしていた日々を、読者に鮮烈に思い出させてくれます。この一編だけを映像化しても良いくらいに良い出来。うまい事作れば、かの「スタンド・バイ・ミー」よりも日本人のツボにズキュウゥンと来る代物になるかも知れません。


 ネタに終始するだけではなく、きちんと読者の奥深くの敏感な所を刺激するやり口は、ホラーでもエッセイでも変わらぬ手腕。素晴らしき哉、押切クオリティ。


 「あの頃ゲームがなければ死んでいたかもしれない」というオビの惹句通りの、クソッタレで最高な日々を過ごしたゲーム好きには二重丸でオススメの優良物件です。


  • 過去記事

 →おばけのおやつ 感想

 →映画「スタンド・バイ・ミー」 感想

  • 余談

 あとがき漫画で出てきた「LEFT 4 DEAD」が猛烈にやってみたいんだぜハニー。

 大型ショッピングセンターの館内地図の前でしばしば立てこもり計画を練ってしまうゾンビマニアにとってこんなにツボなゲームがあったとは。

 でもX-BOX360持ってないんだよなー。