なのはなフラワーズ 1巻

なのはなフラワーズ 1 (まんがタイムコミックス)

なのはなフラワーズ 1 (まんがタイムコミックス)

 主人公の「青ちゃん」こと「青砥奈央」が住み始めた「なのはな荘」は風呂なし・トイレ共同・女性限定の安アパート。

 ちょこっと変わった面々と少しずつ交流を深めつつ、彼女は漫画家デビューを目指します。

 ただ、最近彼女は担当編集の高中君がちょっと気になる様子。仕事熱心な好青年で、事あるごとに「二人で頑張りましょう!」と言う高中君に惹かれ始めているようです。

 さて、青ちゃんの漫画と恋の行方は…?

 お話はそんな具合。ボロアパートを舞台にした人情物で、人と人の出会いや触れ合いを丁寧に描いたとても暖かい作品です。しかもただ暖かいだけじゃなくて、時にほろ苦さや寂しさも織り込む事で、青ちゃんが自分の世界を広げていく成長の物語として描かれています。

 ああ、いいなあ。こういう雰囲気すごく好きだなあ。

 暖かくて切なくて、胸がきゅうっとなりますわ。


 画家の卵やら、ミュージシャンの卵やら、主婦やら、女医さんやら、メイドさんといったなのはな荘の面々も、一癖二癖はあっても根は良い人ばかり。彼女達と青ちゃんがちょっとずつ心を通わせていくのも作品の見所の一つです。

 ただ1巻での一番の見所は、やはり編集者高中君とのほのかな恋。青ちゃんは色気が無くて華の無い眼鏡っ娘なのですが、裏表が無くて純朴で食いしん坊な所が実に魅力的。ちょっと前にポンコツ山田.comさんが「美味しそうにもぐもぐご飯を食べる女の子ってかわいいよね」という記事をアップされておりましたが、青ちゃんはまさにあの記事でいう所の「もぐっ娘」。ほぼ毎回高中さんの差し入れで何かをムシャムシャ食べております。


 で、そこにこれですよ。

 

 パクパク食べる事をちょっと気にしてる女の子がそんなん言われたら、そりゃ意識しますわ。しかも毎回毎回「二人で作りましょう!」とか「青砥さんの全てを見てみたいんです!(作品の方向性という意味で)」とか真っ直ぐ目を見て言われた日にはそりゃもう。しかもそれが狙わないでやってるんだから困ったものです。罪な男じゃのう。


 で、この恋の話は1巻で一区切り付くのですが、このへんの話の盛り上げ方や着地のさせ方がまた実に良いんですよ。巧いなあ。


 胸がじんわりと暖かくなる良作。菜の花が咲く季節の今読むと味わい深さもひとしおかと。

 もちろん続刊も購入決定。超オススメです。


  • 余談

 青木俊直先生って今まで全然知らない作家さんでしたけど、「腹ペコ戦隊はしレンジャー」というサークル名でイシデ電先生、岩岡ヒサエ先生、志村貴子先生、谷川史子先生と一緒に同人活動をされているようです。

 そういえばオビに岩岡ヒサエ先生、志村貴子先生が寄稿されてますね。

 しかしまあこのメンバーの豪華な事!自分にとって好ましい作品を描く漫画家さんばかりじゃないですか。特にイシデ先生やこの青木先生はここ最近商業単行本が出るようになった様子で、この先が楽しみで仕方ありません。

 好きな漫画家さんがだんだん売れていくのを見るのは、いつだって嬉しいものです。



 そういや作者自身も「青ちゃん」だよなあ、と思ったら、「青木俊直(あおきとしなお)」から「き」と「し」を抜いて「青砥奈央(あおとなお)」なんだな。青砥ってちょっと珍しい名字だなー、と思ってたらそういう事か。迂闊。

 作者さん自身は作中の「青ちゃん」とは歳も性別も全然違って48歳のオジサマとの事ですけど、商業誌に顔を出し始めるようになったのは最近の事。もしかすると青砥さんの将来に自分自身をも重ねて漫画を描かれてるのかも知れません。私の思い込みかも知れませんが、こういう意気込みというか静かな熱を感じる裏設定は気持ち良いなあ。

 頑張れ青ちゃん!