罪と罰 5巻


「やったのは僕かもしれないんですよ」

罪と罰(5) (アクションコミックス)

罪と罰(5) (アクションコミックス)

 ドストエフスキーの原作を現代版に翻案した漫画作品、第5巻。

 殺人を犯して変質していく主人公「弥勒」と、教え子との愛憎に苦悩する教師の一期の出会いを通じて、特に人と人の絆を主軸に据えて描かれている今巻。実に面白かったです。巻を増す毎に面白くなっていくなあ。

 1〜3巻の緊張感のあるサスペンス的な展開から、次第に人の在り方を問うシリアスな展開になってきました。

 かといって堅苦しい事はなく、ちゃんと人間ドラマとして「魅せる」展開の中でそういうものを語ろうとしているのが凄い。今巻でも教え子とその教師の愛憎渦巻く関係や、主人公に関わってくる良き友人「矢住」や下宿の娘との関係はちゃんと読み物として面白く、更にその上で「こうすればいいのに」「こうすれば良かったのに」という事を考えさせる内容になっています。

 元々物語というのは「出来事」を通じて「物事」を伝えるのが主目的と思っておりますが、こういう骨組みがしっかりしていて、かつわかりやすい作品は読んでいて非常に気持ち良いです。原作が優れているのか、それとも翻案能力が優れているのか。おそらくはその両方でしょう。


 今後が非常に気になる作品。原作を読んでいないだけに、主人公の行く末がどうなるか、もうドキドキものです。

 続刊が楽しみ。

  • 余談

 「ドストエフスキーなんて難しそう」なんて尻込みしてる人へ一言。この漫画は全然難解じゃありません。何度も同じことを書きますが、エンターテインメントでありながらしっかりしたテーマを持った良作です。

 「ブンガクなんて…」と敬遠して見逃すにはあまりに惜しい出来。オススメです。

  • 関連

 そういや手塚先生も描いてましたね。罪と罰

罪と罰 (角川文庫)

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 こちらは読んだ事無いので、一度読み比べてみるのも面白そうです。


  • 過去記事

 →罪と罰 1・2巻感想