がらくたストリート 1巻

<ちょっとネタバレ注意>

 

がらくたストリート 1 (バーズコミックス)

がらくたストリート 1 (バーズコミックス)

 表紙買いして積みっぱなしだったのを今日読みました。

 とある田舎の少年少女達を描いたジュブナイル物…の皮を被った何か。一言でくくるならご近所SFゆるゆるコメディって所でしょうか。

 主人公達が宇宙人に出会ったり山の神様に出会ったりってのは、まあ漫画の展開としては想定の範囲内ですが、当の宇宙人はツインテール女子だわ、そのペットは毒舌で喋るわ、主人公はヤクザの親分と五分の杯交わした小学五年生だわ、その友達は全知かと思えるほど物知りだわ、主人公のアニキは神出鬼没だわ、校長と教頭は朝礼で漫才するわ、幼馴染の女子は宇宙人にヤキモチ焼いてスゲエ可愛いわでもう大変。

 ストーリーはあって無きが如く、日常の不思議体験とコメディをゆらゆらと描きながら、やっぱり緩やかに話が繋がっているという実に面白い構造。

 所々に挟まれる本筋に関係ないディープなオタクネタすら、訳が分からない雰囲気を出すのに一役買っているようです。


 で、一番良いのはその淡々としたセリフ回し。さっき述べたオタクネタもそうなんですが、とにかくこの登場人物達ときたら本筋と関係ない所で自由奔放に喋りたおすわけですよ。お陰で本筋が全然進まない。でもその掛け合いがまた楽しいから困ったもの。
 
 そこでちょっと踏み込んで考えると、彼等(特に主人公)にとっては宇宙人も神様もヤクザとの関係も友達との会話も兄貴とのやりとりも、みーんな同等なんじゃないかって事。そのせいか、主人公達は宇宙人に会っても比較的リアクションが薄いんですよね。どこかに「あ、そうなんだー」みたいな雰囲気があって、子供らしく驚いたり叫んだりしない。それは感受性が乏しいとか無関心無感動とかじゃなくて、逆に「何でもフラットに受け止める事が出来る柔らかさ」、言い換えるなら子供の「あるがままをあるがままに受け入れて楽しむ事が出来る能力」を、ディフォルメして描いているんじゃないかな、と感じます。だから多分彼等は十二分に「日常」を楽しんでると思うんですよ。

 それは裏を返せば、仮に超常現象のようなドラマチックな事が無くても*1、子供みたいに五感を働かせれば日常には「楽しむ余地」がまだあるって事。悪い言い方をするなら、自分からたいして動きもせずに「刺激的な日常」を安易に求める事が如何に「怠けている」事か。この漫画は、超常を描きながらも逆説的にそういう事を示唆しているような気がします。


 とか何とか穿った見方はさておいても、こういう雰囲気&台詞回しが斜め上の漫画は大好きです。普通にコメディとして十二分に面白い。

 続刊も買いです。

  • 余談

 どっかで見た事ある絵だなー、と思ったらエロい国の人・ZERRY藤尾先生だそうで。言われてみりゃネタの挟み具合や妙なテンポもエロ漫画の時のソレと同じですね。「リボルバー」収録の忍者シリーズとか面白かったなあ。

 

*1:我々のいる現実世界でも