戦国妖孤 2巻


「だが…何故だ 何故無視できん!? 面倒な!!」
 

戦国妖狐 2 (BLADE COMICS)

戦国妖狐 2 (BLADE COMICS)

 戦国妖怪アクション第2巻。

 ああ、面白えなあちくしょう。1巻では比較的静かなスタートでしたが、2巻では人間「迅火」と妖弧「たま」の人間に対する思いの対比が浮き彫りになってきて、アツい展開になってきました。人間のはずの迅火がかたわらに心惹かれ、妖弧であるたまが人間の世直しをしようというのがこの物語のキモ。

 

 劇中ではまだ明確になっていませんが、おそらくは迅火が人間嫌いになった理由、及びたまが世直しを始めた理由は同じ根っこのような気がします。人間に絶望するような状況下で、人間という存在に見切りを付けたのが迅火、「なんとかしなくては」と思ったのがたま、なんじゃないでしょうか。

 で、冒頭に抜き出した台詞は人質を取られた時の迅火のモノローグなんですが、こんな具合に迅火も人間を捨て切れていないあたりが実に燃えます。更に「灼岩」や「氷岩」のような半人半妖の悲しさ*1が物語に深みを与えています。

 まさに2巻ラストで言われている通り「人とは何か、かたわらとは何か」を問う作品なのでしょう。

 『非人間を用いて人間性を描く』というのは物語において常道中の常道なのですが、それをきっちり魅せてくれる作家さんとなると話は別。その点水上作品は、派手派手しいバトル場面だけでなく日常のなんでもない場面をしばしば描くことによって、息の抜きどころを読者に作ると共に、その異形達の戦いの意味を現実世界*2に落とし込む呼び水としてそれを機能させているように思います。巧いなあ。

 そして何より物語そのものが面白いのがもうね、ホント堪りません。続刊も大期待です。

  • 余談

 しっかしたまは可愛いですねえ。その上チームのリーダーとしての男前っぷりも発揮してくれます。つまりカッコ可愛い。惚れ惚れするぜ姐さん。


  • 過去記事

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*1:当ブログで良く出てくる「異形の哀しさ」という奴です

*2:言い換えるなら読者の腹の中