「漫画とテーマソング」の話


 昨年末、ポンコツ山田.comさんの所でこんな記事を見まして。


 →漫画とテーマソング


 要約すると「アニメ化されていない漫画のテーマソングを決めて遊んでみよう」って事なんですけど、見た瞬間正直「やられた!!」と思いましたよ。というのも、自分もいつか記事にまとめようとしていた事がズバリ書かれていたので。

 確かに、漫画好きならやった事あるかもと想像できる行為*1なのですが、ちゃんとまとめて記事としてUPするとなると話は別。最初にやったものがオリジナルであり始点でありアダムとイブなのである*2。それを後から「いやア、自分も記事にまとめようとしてたんだけどねえ」なんて言った所で言い訳にしか聞こえない。でもやる。

 何故ならそれらが好きだから。

 最早これ以上の言葉は無粋。ではゴー。



<その1>

 「ルサンチマン
 ルサンチマン 1 (ビッグコミックス)
 と、
 レベッカの「MOON」
 
 
 着想元は月子=MOONってことで、そのまんまですね。でも不思議と歌詞が合ってる所があって面白いんですよ。

 例えば下記の部分なんか粗ポリゴン状態のMOON(月子)のシーンにマッチすると思います。

MOONあなたは知ってるの
MOONあなたは何もかも
はじめて歩いた日の事も

MOONあなたは知ってるの
MOONあなたは何もかも
はじめてキスした日の事も

 でも歌のMOONの歌詞内容からすると月子とたくろーが別れる事になっちゃいますけどね。



<その2>

 「宇宙家族カールビンソン」(アフタヌーン連載版)で縁日の日にコロナちゃんが神隠しに遭う話
 宇宙家族カールビンソン 1 (アフタヌーンKC)
 と、
 ZABADAKの「かえりみち」
 
 *オフィシャルのPVではありません。絵は素人さんが描いた動画のようです。 


 すっげえピンポイントだなオイ。うなづいた人は最早ソウルブラザー確定です。

 漫画を先に読んで、歌のほうを聴いたのが後なんですが、歌を聴いた瞬間にこの漫画のこのシーンが浮かびまして。

 まずは神社・お山*3の怖さ気味悪さが直接的なイメージとして結びつくのですが、最終的には宇宙で迷子になってるコロナちゃんの境遇に行き着くわけです。

帰りたいね 帰るよ 帰れない
近くてもたどり着けなくて

届きそう でも今は 届かない
目隠しされた その向こうへ


(歌詞より抜粋)

 この漫画は「コロナは自分が迷子って事を知らずに過ごしてて、元劇団員達が家族を演じている」という舞台設定のコメディ漫画なんですが、どんなに明るく楽しい日常でもコロナが「宇宙ひとりぼっち」である事に依然変わりはないわけで。

 そもそもこの漫画ってのはコロナの笑顔やギャグ場面という「陽」の部分の裏側に、一人ぼっちの怖さ*4という「陰」の部分が隠されてると私は感じているんですが、この神社のエピソードではそれを「縁日の楽しさ(陽)/神隠しの怖さ(陰)」として表現する事で、物語全体の構造を示唆しているように思えます。

 だから、ラストで「おとーさん」が神様の結界を力技でぶち壊してコロナを助けるのはギャグ描写であると共に、物語の構造という視点で見ると結構深い意味があると思うんですよね。

 前も書いたけど、あさりよしとお先生の漫画はこういう深読みができるフトコロの深さが大好きです。



<その3>

 「なつのロケット」
 なつのロケット (Jets comics)
 と、
 
 THE BOOMの「不思議なパワー」
 
 「なつのロケット」は少年時代の永遠の夏を閉じ込めた傑作という事でベン・E・キングの「Stand by me」と迷う所ですが、こちらをセレクト。

 両曲とも「となりに君がいる事の大切さ」というテーマなのですが、「Stand by me」よりも「不思議なパワー」の方が少年時代の友情というテーマではより合う思うんですよね*5

あの日君と分かち合った 宝物なんて
今になって思い返せば がらくたの山さ

いつか いつの日にか 君が大人になって
芽を吹いて 川や森が生まれる

不思議なパワー あふれるパワー
眠れない朝にさよなら

不思議なパワー 強い力
喜びは君と僕のもの


(歌詞より抜粋)

 少年時代の友達と疎遠になっても、社会に出てお互い変わってしまっても、バカみたいにはしゃいでいたあの頃は――その事実は、永遠に変わらない。 
 だからそれは遠く離れてしまったものでも無くしてしまったものでもなくて、今を生きる為の「パワー」として心の奥で確かに息づいている。


 本当にいい歌です。本当にいい漫画です。オススメ。



<その4>

 「働きマン
 働きマン(1) (モーニング KC)
 と、
 
 ビートルズの「Hard Day's Night」
 
 これはそのまんまですね。直球で。ワーキンライクアドッグ。ワンワン。



<その5>

 

スローニン 1 (ビッグコミックス)

スローニン 1 (ビッグコミックス)

 と、
 ブルーハーツの「情熱の薔薇」
 *6
 
 吉田聡先生の漫画ってのはアツいんですよ。ブルーハーツってのはアツいんですよ。合わないわけが無いでしょうが。

 「スローニン」はスポーツで挫折した青年二人の再生を描いた物語。心にしこりを抱えたまま何でも屋をやってた二人が、色々な事件を経て最終巻で進むべき道を見つけてワッと火が付きます。胸に真っ赤な薔薇が咲いた瞬間ですよ。いやー最高!

 読むがいい!聴きながら読むが良い!

答えはきっと 奥のほう
心のずっと 奥のほう

涙はそこからやってくる
心のずっと 奥のほう

(歌詞より抜粋)



<おまけ>

まんが道

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

と、
長渕剛の「HOLD YOUR LAST CHANCE」

 この組み合わせはオフィシャル。というのもドラマ版の「まんが道」のOPテーマだったので。鳥肌モノの完璧なマッチング。

HOLD YOUR LAST CHANCE
小手先で剥がれ落ちる美しさより

HOLD YOUR LAST CHANCE
一粒の汗のほうがいい

二度と走れぬ 坂道をのぼったら
HOLD YOUR LAST CHANCE

(歌詞より抜粋)

 沁みるぜ。


  • 余談

 ところで今日の話って何人ついてきてるんだろう…?間違いなく30代以上の人しかわかんないよなコレ。

 

*1:事実自分もやってますしね

*2:そういう意味では、正確に言うならたまごさんのラジオが着想点で、山田さんの記事が始点になる

*3:いわゆる民間伝承や伝奇物で言う所の霊的な場所としての「お山」

*4:薄気味悪さ、という言葉の方が伝わるだろうか

*5:まあ「Stand by me」は元々ラブソングですしね

*6:一番音が良いのを選んだらたまたまこういう動画でした。漫画とセットで考えるなら字幕は邪魔かも