木造迷宮


「そんなボクの家には 良く出来た女中さんがいる」

木造迷宮 (リュウコミックス)

木造迷宮 (リュウコミックス)


 お話は昭和の日本を舞台に、冴えない三文小説家の「ダンナさん」と、彼の家にやってきた女中の「ヤイさん」のほのぼのとしたストーリー。

 ダンナさんは丸メガネにボサボサ頭の冴えない中年丸出しの独身男。対してヤイさんは家事万能で素直で可愛らしい大和撫子。しかも時折見せる子供っぽい表情とかお酒を飲んだ時の色っぽい表情とか、くるくる変わる表情が見ていて非常に魅力的。
 裏表紙にもある通り、ダンナさんとヤイさんの関係は恋愛未満の所でお話は終わっているのですが、それがまたヤキモキしつつも微笑ましくてたまりません。

 また、作者さん独特の柔らかい描線が昭和の雰囲気を良く伝えていて、全編を通して温かみのある画面になっています。初単行本との事ですが、とてもそうは思えない完成度。ほとんどトーンと定規を使わない描き方も、おそらくは一朝一夕に出来たものではないでしょう。作者さんの研鑽に敬意を表します。

 
 さて、それではそろそろ本題に入りましょうか。 


ヤイさん可愛いよヤイさん。

 つまり端的に言うとヤイさんが可愛かったりヤイさんが凄く可愛かったりヤイさんが反則的に可愛かったりするわけですよアンダスタン?(落ち着け)

 いや、まあね、この作品自体が「ちょいと兄さん、アンタ割烹着の女中さん…好きだろ?」的なスタンスで描かれている事は最早疑いようの無い所かと思うわけですが、これは見事に術中に嵌った。
 元々メイドさん属性は無い自分だが、明治・大正あたりの女中さんとなればかなりのストライク。つまり本場イギリスのメイドさんよりも「欧米趣味の主人にエプロンドレスを着せられている黒髪女中さん萌え」な自分にとって、「日本の女中さん」ってのはそれだけで割と好物なんです。それをまさか庶民的な舞台になじませる為に敢えて割烹着にするとは。しかもそれがここまで可愛いとは。しかもそれがここまで可愛いとは!(2回言った)

 思うに、ヤイさんって多分「こんな女中さんが居たらサイコーだろうなー」っていう作者さんの脳内女中さんなんじゃないでしょうか。だとしたらその情動をここまで丁寧に画面に描き出し、世に出した作者さんにはグッジョブと言わざるを得ない。

 いやホント、ヤイさん可愛いよヤイさん。

 まあそんなわけで割烹着の女中さん愛を昭和テイストで暖かく描いた佳作。ストーリー仕立ては割とベタながら、ここまでキャラの魅力で読ませてくれるなら文句の付けようも御座いません。オススメです。


  • 余談

 本文ではヤイさんの事ばかり触れてましたけど、脇キャラの元気娘「ミカネくん」や委員長の「ツグミちゃん」も魅力的でしたね。特にツグミちゃんのワンピ姿にはやられました。いかにも「ワンピースなんて着慣れてない」感じがもうヤバい。なんという昭和ツンデレ委員長。