かぶく者 1・2巻

 

かぶく者(1) (モーニング KC)

かぶく者(1) (モーニング KC)

 

かぶく者(2) (モーニング KC)

かぶく者(2) (モーニング KC)

 本誌で一回だけ読んで面白かったので単行本出るのを待ってた漫画。なかなか出ないなー、と思ってたら1・2巻同時発売との事で納得。

 ―「かぶく」とは観客の心を掴み、意のままに揺さぶる事―
 
 若き歌舞伎役者の「市川新九郎」は伝統や家を重んじる歌舞伎の世界において「かぶく」事にしか興味が無い天才肌の男。一方歌舞伎の名家に生まれた「仲村宗太郎」は小さい頃から伝統を受け継ぐ者としての重責を負った男。

 正反対の二人が相容れるはずもなく、特に宗太郎は新九郎に激しい敵愾心を燃やす。


 芸とは何か?どうすれば「かぶく」事が出来るのか?

 ライバルと、そして何より観客と全身全霊をかけて戦う役者達の生き様は、今日も舞台の上で熱く激しい「華」になる!

 あらすじはそんな所。いやー、面白いです。「マッシュ」や「昴」みたいな、こういう芸術バトル物って結構好き。在野の天才VS名家の御曹司ってのはこの手の漫画の基本フォーマットなんですが、この漫画でもそれが非常に効果的に使われていて、物語にぐいぐい引き込まれます。

 ともすれば「天才側」の痛快な伝統・格式の破壊劇に終始しかねないこの手の漫画において、本作では「名家側」の努力や苦悩も同等の密度で描かれるのが物語に深みを加えていて実に面白い。要は打ち倒される(であろう)側にもきちんと血を通わせているわけなんですが、そのおかげで自分なんかは宗太郎側に感情移入してしまうほど。名家に生まれたが故に仲村家の芸と自分自身の芸の間でもがき続ける宗太郎にとって、奔放で才のある新九郎はいかに憎く、羨ましく思えることか。

 そして2巻で登場した女形の大御所「芹沢恋四郎」は、若手の二人を大役に抜擢して同じ舞台の上で競わせようとします。しかしそれは二人が産み出す火花を利用し、自分自身が舞台の上で更に輝くための作戦だったりして、もう最高。「かぶく」事に命をかけた三つ巴のバトルは一体どうなるのか?って緊張感が非常に心地よい所で2巻はおしまい。…って、ここで次巻に続くのかよ!


 編集巧すぎるだろモーニング。これは見事に「かぶかれた」わ。


 つーわけで3巻も買い。