夕日ロマンス

 約束どおり昨日の続きで盆休み中に読んで面白かった漫画第2弾。同じカトウハルアキ作品の「夕日ロマンス」です。
 


「アタシは…アタシはッ 弟の事が……!」

夕日ロマンス(Flex Comix)

夕日ロマンス(Flex Comix)

 「紅ユウ」と「紅ヒロ」は実の姉弟。でも姉のユウは弟の事を一人の男性として好きになってしまった。弟に告白さえしないものの、ユウの妄想と暴走は留まるところを知らない。そんな中、異母姉妹で同じくヒロの事が大好きな「旭名トモ」も現われて、何と姉−弟−妹の異常な三角関係に!二人の気持ちに気付かない鈍い弟ヒロ君を軸に繰り広げられる奇妙な学園ラブコメディー。

 あらすじはそんな所。基本的には変態的な姉の妄想とか反応を楽しむコメディ作品なのですが、時折混ざるしんみりした心理描写が非常に良いです。物語の緩急の付け方が巧いというか。ユウとヒロの両親の過去編ではかなりグッと来ましたよ。

 ヒャッコの1巻の最終話の時にも感じたんだけど、このカトウハルアキさんってシリアス物を描こうと思えば多分いくらでも描ける地力のある人なんじゃないでしょうか。「ヒャッコ」も「夕日ロマンス」もそういったシリアスなテーマにコメディの皮を厚めに被せる事で、高校生活の「明るさ・楽しさ」と「重さ・悩み」の両方を対比して描こうとしてるような気がします。

 だから「夕日ロマンス」も一読した時は基本的に笑って読めるのだけれど、2度3度読み返した時に一歩引いて見ると、なんだか不思議な気分に襲われる。正に「夕日」に見入っている時のように、哀しいような、切ないような、それでいて頬が少し暖かいような。


 この先、作品の解説でちょっとだけネタバレ含みますんで反転します。
 事前に何も知りたくない人は読まない方が良いかも。


 そういう意味で、この作品は実はユウの視点から見れば結構な悲恋物なんじゃないかなー、と思います。ヒロはいつまで経っても気持ちに気付いてくれないし、逆に気付かれて離れられたらそれはそれで辛い。だから告白する勇気もキスする勇気もない*1けれど、せめて帰り道でベタベタしたりクラスメイトに弟ラブとか言ってはしゃいだりするしかない、みたいな。つまり本当に好きなんだけど「姉弟ではどうしようも無い事」が分かってるから変な方向でハジケるしかない、と。で、好きになればなるほど辛いからといってクールダウンしようと思ったって、同じ家に住んでる以上距離を置く事も出来ない。それに大好きな人が近くにいるのが幸せ。幸せで辛い。
 ほら、これって結構キツい状態じゃない?というわけで俺の脳内ではユウはたまに自分の部屋で一人泣いてます。つまりそんなユウが切なすぎて愛おしすぎる。


 というわけで表紙見返しの作者の言を借りれば、まさに「ヘンタイアネモエ」の傑作です。1巻で終わってるのがもったいない。

 

  • 余談

 何となくだけど、カトウハルアキって女性っぽいなー。モノローグの描き方とか、女性を可愛く可愛く(要は男が萌えやすい記号を強調して)描かない点とか。気のせい?

*1:未遂は有り