さあ、花丸町へ行こう

 
 らいか・デイズ 1 (まんがタイムコミックス) まい・ほーむ 1 (バンブー・コミックス) だって愛してる 1 (まんがタイムコミックス) がんばれメメ子ちゃん 1 (バンブー・コミックス)

 「らいか・デイズ」を読んで以来すっかりむんこ先生の漫画にはまってしまった。単行本を全部揃えているのはもちろん、掲載誌増刊の「むんこコレクション(芳文社)」や「むんこスペシャル(竹書房)」も出来るだけフォローするという近年にないはまりっぷり。前にも書いたけど、たまにこういうとんでもない漫画家さんが出てくるから漫画読みはやめられんよ。
 さてこの一連の作品、もちろん4コマの基本である笑いの部分のセンスも素晴らしいのだが、彼女の作品の魅力は何をとっても「日常の暖かさ」だと思う。「らいか・デイズ」では小学生、「だって愛してる」では凸凹夫婦、「まい・ほーむ」では父子家庭、そして「がんばれメメ子ちゃん」ではOL一年生と、それぞれ違った題材を描きながらも根底に流れるテーマは同じ。それは「誰かが誰かを思いやる事の素晴らしさ」だ。恋愛でも友情でも親子愛でも、名前は何でも構わない。とにかく「隣にいる誰かを思う事」「誰かに思われる事」の暖かさが、彼女の作品からはこれでもかというくらい溢れてくる。おまけに時折キャラ同士の衝突も描く為か、それらは決して教科書的な押し付けがましいものではなく、血の通ったキャラクター達が織り成す実感のある暖かさとして伝わってくる。

 そんな彼らが住む町が「花丸町」だ。先の日記にも書いた通り、むんこ先生の現在連載中の4作品はすべて「花丸町」という架空の町を舞台に描かれている。これらの作品に魅せられた人の中には「花丸町に住みたいっ!らいかちゃんや街子さんに会いたい!あの暖かい町に住んでみたい!」と思う人も少なくないのでは?


 でもここで少し考えて欲しい。


 あなたがこのマンガの素晴らしさを理解できるのは何故か?

 あなたがこのマンガのキャラ達に共感できるのは何故か?

 あなたがこのマンガを「暖かい」と感じるのは何故か?


 何のことはない。それは、「誰かを思うこと」「思われること」の暖かさを、あなた自身が既に知っているからだ。

 それは随分と遠い過去の思い出かも知れない。それは目の回る忙しさの余り忘れているかも知れない。しかし、それでもあなたの中のどこかに、必ずそのぬくもりは残っている。だからこのマンガの「暖かさ」を理解できる。それはマンガという虚構の存在ではなく、現実に生きているあなた自身の大事な持ち物だ。

 そう、だから花丸町はおとぎ話の舞台ではない。行きたいと夢想するファンタジーの世界ではない。
 だって、あなたは既に心の中に自分だけの「花丸町」を持っているのだから。そして、自分の周りの環境を「花丸町」にするのかどうかも、あなたの気持ち次第なのだから。
 
 むんこ先生の漫画はとてもとても暖かい。しかし、逆にそれ故に彼女の漫画に「今時そんな事ねーよ」と言ってしまうのは簡単だ。でもそんな世の中だからこそ、彼女はこういう漫画を描いているのではないだろうか。今日より明日が、明日より明後日が、明後日より明々後日が…世の中が少しでも、少しずつでも花丸町になる事を祈って。


 ではシメとして、その意味を踏まえて今一度タイトルコールを。


 さあ、花丸町へ行こう。

  • 余談

 今日の更新のネタがJRの「そうだ、京都行こう」のCMを見て思いついたという事はナイショだ!良い子とお兄さんの約束だぞ!(バラしてるバラしてる)