完成品とプラモデルについて

 上記の記事のついでに昨今の玩具事情についてちょっと偉そうな事を。

 メカ物にしろフィギュアにしろ、最近は完成品の玩具・食玩のレベルがどんどん上がってきて、買ってきた物をそのまま飾るだけでも十二分にカッコいい。ただし、それだけで満足してしまうのは実にもったいない。
 なにせ、自分で作ったものは世界に一つしかない。それに手を動かす楽しさ、及びそれによる達成感は何物にも代えがたいものだ。
 プラモ好きなら同意して頂けると思うが、モデラーが自分で作った模型を見て感じるのは「やっぱザクってカッコイイよなあ」というよりむしろ「俺のザクってカッコイイなあ」と言った方が正確であろう。自分がバラバラの状態から組み上げ、色を塗り、完成させた物は、たとえそれがどんな出来であろうと「俺のザク」なのだ。愛情の沸かないわけが無い。


 実は数年前に模型から遠ざかっていた時期があって、そんな時に見たのがこの本だった。

MAX渡辺&大越友恵のガンプラ大好き! (Hobby Japan mook)

MAX渡辺&大越友恵のガンプラ大好き! (Hobby Japan mook)

 内容はプラモ初心者の大越女史(声優だったかな?)がMAX渡辺氏に教わるという形式を取った、初心者向けのガンプラの作成マニュアル本だ。
 初心者向けにわかりやすく解説されたガンプラの製作ハウツーはもちろんの事、実は一番役に立ったのはMAX氏のたった一言。


『模型に「絶対にやらなきゃいけないこと」なんて、じつは一つもない』


 これを読んだ時はまさに目からウロコだった。
 思えばプラモデルを作り始めた頃は色も塗らないで組み立てて、それで十分満足してたじゃないか。それがいつの間にか模型雑誌やプラモ狂四郎(笑)を読むうちに、改造したり色を綺麗に塗ったり資料を集めたりしなけりゃいけない、みたいなある種の強迫観念に取りつかれてしまい、「手を抜かないで作らなきゃいけない」と無意識的に思うようになってしまっていた。それが、MAX氏の一言でふうっと楽になった。

 この本を読んでから、出戻りモデラーとして初めて作ったのが以前の記事に載せたキュベレイ*1だ。何せ数年ぶりにプラモを作ったものだから、実は着手から完成まで丸1年くらい掛かっている。しかしそこで一番後悔したのは、自分が「手を動かす事の楽しさ」を長く忘れていた事だった。その後は1日で仕上げる事が出来る「お手軽仕上げ」で作ったり、今回のタチコマみたいに気合を入れて作ったり、その時の気分で好きなように作っている。これがまた楽しくて仕方ない。

 そう、手を抜いてもいい。自分のやりたいようにやればいい。あれこれ悩んで結局何も作れないよりは、たとえどんな出来でも「自分で作ったもの」が目の前にあるほうがずっと嬉しいし、次へのやる気が出る。
 当たり前の事だけど、趣味なんだから楽しいことが大前提なのだ。
 

 折しも夏休み。プラモを作ってみたいなあという初心者も、中年の出戻りモデラーも、まずは一作作ってみてはどうだろうか。
 きっと、完成品をこねくり回したり眺めたりするのとは全く違う楽しさに出会う事が出来るだろう。