史上最高のシンデレラ

唄う骨 (Bunkasha comics)

唄う骨 (Bunkasha comics)

 じぃんと良い。

 「青ひげ」や「シンデレラ」などの童話をベースに、作者独特の感覚で描かれる物語は極めて上質で「ああ、良い漫画を読んだな」と言う気分に浸らせてくれる。

 すべてのエピソードがハッピーエンドではないけれど、ひたすらに陰惨な話ばかりではなくて、悲劇の中にも人を想う気持ちが必ずひとつまみは入っていてそれが読者をじんとさせる。


 特に気に入ったのはシンデレラの話。とはいえシンデレラよりむしろ、ここでは2人の姉と母親に焦点が当てられている。
 実はシンデレラの話には、ガラスの靴を履くために姉の一人が足を切る残酷な描写があって…って言うのは割と有名な話。
 しかし彼が描くシンデレラには更にその先があって「姉がどうして誰の為に足を切ったのか、そしてどうなったか」や「もう一人の姉の想い人、そして二人のその後」といった、いわばシンデレラの周辺情報を詳しく描いている。

 シンデレラだけがハッピーエンドの通常の「シンデレラ」に比べて、なんて救いがあって、なんて奥深くて、なんて暖かい「シンデレラ」だろうか。
 シンデレラの類似形なんてのはいくらでもあるが、これには「やられた」という他ない。
ぜひ自分の目で確かめて欲しい。


 同時発売のこちらもお勧め。こちらはアジア系の昔話がベース。

化けの皮 (Bunkasha comics)

化けの皮 (Bunkasha comics)


 この2冊共に共通して言えることだが、行間から作者の「やっぱみんな幸せになんなきゃ、嘘でしょ」って声が聞こえてきて、それが何とも心地よい。良作です。