秋葉少年
- 作者: 瓦屋根,将吉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/21
- メディア: コミック
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「オタクの聖地」秋葉原を舞台にした短編3編を収録。元は小説だとか。
あらすじは以下。
「きよしメモ」
ある日少年は3人の若者達にオタク狩りに遭った。彼らに復讐を誓い、そしてそれを成し遂げた少年は、やがて「オタク狩り狩り」としてアキバの裏路地で「オタク狩り」を狩る事を日常とするようになった。
「狩り」に喜びを見出し始めた少年はやがて――。
「秋葉原チケットセンター」
「ニジゲン」と言われる萌え系オタク趣味が全く理解できない青年がふと入ったチケットセンター。そこで無料で貰えた「アキバ系パスポート」は、彼の周りの物をどんどんニジゲンにしてしまう。止まらないニジゲン化現象に困惑した青年はチケットセンターを探すが、いくら探しても見つからない。あの店でちらりと見た「パンピーパスポート」なら、一般人に戻れるかもしれないのに……。
「タイム誌の女の子」
アイドル系オタクの青年は、その日「TIME」の秋葉原特集で見たモデルに一目惚れをした。しかしいくら調べても素性がわからなかった彼は、「いないのならば作ればいい」と考え、記事の写真を使って彼女のブログを作り始める。
妥協無くキャラを作りこまれた彼女―「ミコト」がネットの中に息づき始めたある日、彼のPCにメールが届く。差出人は、なんと――。
以上あらすじ。出来としては正直もう一ひねり欲しい感じ。つまらん!と断じるほどじゃないけれど、そう来たか!と膝を打つほどでもない。ただ、絵もお話もそこそこは描けていると思うので次回作が出たら覗いてみるのはアリかなー(←誰様?)。
では各話毎の感想を。
<以下ネタバレ含みますので注意。一応反転しておきます>
「きよしメモ」
主人公がオタク狩り狩りという行為によって暴力の虜になっていくのは、まあ良くある話。「問題はどこに着地させるかだよねえ。「ダズハント」と同じオチだったらカブっちまうぞー?」と思って読んでたら、なんかコメディ系のオチに。それまでが割とハード系に進んできただけに何だか肩透かしを食った気分。
あと所々に織り込まれるパロディもちょっと鼻につく。
でも武器屋の眼鏡店員は可愛い(私見)。
「秋葉原チケットセンター」
「世にも奇妙な物語」系のフシギな話。非オタが強制的にオタク環境に叩き込まれて戸惑ったり、オタ部屋が彼女にバレそうになってあたふたする話なのですが、最終的には主人公がオタクになってしまうというオチ。しかも彼女も実は腐女子でハッピーエンドだとう?何じゃそりゃ…ねたましい!
個人的には安易なオタク礼賛はやめてほしいなあ。オタク選民思想なわけじゃ無いけれど、理解できない人は一生理解できないままでいい趣味だと思うので。
確かに自分にとって漫画は最高に楽しい趣味ですけど、万人向けの趣味なんて存在しません。この物語で言うなら、主人公は元通りの非オタに戻るけれど、ただ一点「ニジゲン退治」をしなくなるって方が、「お互いを尊重する」という雰囲気になって良かったと思います。
「タイム誌の女の子」
3編の中ではこれが一番良かった。ブログで作り上げたいわば「脳内彼女」と、リアルの「モデルの女の子」のどっちを取るかという選択に迫られた時、アンリアルの方を選択してしまう業の深さが実にオタク的。言い換えるならオタクの「どうしようもなさ」が端的に表れている話なのですが、それは社会的観点での非生産性とか欠陥人間という意味での「どうしようもない」ではなくて、抗えないほどに強い欲求に衝き動かされているという意味での「どうしようもなさ」。自分の脳内彼女のイメージを守る為に、折角掴みかけたリアルの女の子との接点を切ってしまう彼の背中は、同じオタクとしてちょっとクるものがあるラストシーンでした。
なんてカッコいい小デブ。