あしたの弱音

「俺は何も変わっちゃいねえさ
 昨日と同じ
 ただ変わり続けるだけなのさ」

あしたの弱音 (BEAM COMIX)

あしたの弱音 (BEAM COMIX)


 ちょっと前に話題になった「あしたの弱音」を今更ながら読んでみました。


 学校の屋上に(勝手に)居を構え自給自足生活を送るちょんまげ中学生「駄目元 弱音」を描いた漫画。当初はドタバタギャグ漫画だったのが、後半に行くに従ってシリアスな展開に。何でも元々は単行本になる予定ではなかったとの事で、読者の評判の良かった中盤〜後半のみが単行本化されたとの事。

 コメディをベースにしつつ、主人公の「弱音」が毎回青臭い事を言うのが基本的な展開。普通、これだけ青春濃度の高い言葉を何度も何度も読まされたら鼻について仕方が無いものだが、この漫画ではそれが無い。それはコメディ要素でバランスを取っているからという事もあるだろうが、何と言っても主人公が「行動し続けるバカ」だからに他ならない。
 自分の家(屋上)を守るためにケンカをし、合コンに行って振られ、農家の手伝いをし、河原で犬とガチンコバトルを繰り広げる主人公は、いつだって全力かつ本気だ。そうやって自分を曲げないで戦い続けている彼を見ていると、こちらも居ずまいを正して「どれ、話を聞こうじゃないか」という気分になってしまう。血を流して何かを訴えている人間を完全に無視できる人は、きっとそんなに多くは無い。
 そういう状況下の中で、それらの青臭い言葉群が毎話毎話に織り込まれてくるのだから、読んでる方としてはもう堪らない。ちょんまげ姿の一中学生の台詞が、読みすすめる程にジャブのように少しずつ少しずつ効いて来る。
 そしてそのうち主人公に感情移入してしまい、彼の行く末が見たくなる。こんな濃い青春を送った奴は、将来一体どうなるのか?と。

 かくて最終回では5年後の彼の姿が出てくるのだが、その姿も最後の台詞もとんでもなくカッコ良い。はっきり言って惚れた。


 前向きな気分になれる事間違いなしの良作。こういうの好きだなあ。

  • 余談

 しかし完全にこの作品の連載中に成長してるな作者。デビューは12年前だって言うけど、単行本初めの絵を見る限り(失礼ながら)今まで芽がでなかったのもうなずけるレベル。それが絵にしてもストーリーにしても、後半に進むにつれ皮がベロンベロンめくれまくってます。単行本の最初の話と最終回ではまるで別人の作品。こういう成長は読んでて実に気持ちがいい。

 という事で「アベックパンチ」の方も俄然読みたくなりました。明日買ってこようっと。