俺はまだ本気出してないだけ 1巻


「いいんですか?本気出して…」

俺はまだ本気出してないだけ 1 (IKKI COMICS)

俺はまだ本気出してないだけ 1 (IKKI COMICS)

 突然会社を辞めたかと思えば「俺、漫画家になるわ」とか言い出した40歳の小太りオヤジが主人公。そしてタイトルが事もあろうに「俺はまだ本気出してないだけ」。もはやコレだけで痛い内容であろう事は想像に難くないわけで。

 そんなわけでもっともっと悲惨で救いの無い物語かと思ったらそうでもなくて、中年の自己欺瞞と哀愁とひとかけらの意地を主軸に、家族や周りの人々との「ほんのちょっといい話」を描いた作品でした。主人公は本当にむさ苦しいオッサンなのに読後感はそんなに悪くありません。テーマ的には「最強伝説黒沢」に近いように思います。あそこまでのコメディ+アツさはありませんが。


 ただ、読切と連載の区別が曖昧なんでちょっと混乱する。単行本最初の話「走馬灯」は第1話じゃなくて読みきりだって事が奥付見ないとわからないので、それ以降の話を読んだときに違和感が出る(「走馬灯」で一旦のオチが付いて話として完結している為)。大勢には影響の無いレベルだけど、そのへんは編集さんに多少気を遣って欲しかったなあ。


 とはいえ充分に面白いので続刊も購入決定。

  • 余談

 ところで今巻収録の「生きる」の回で使われてた『自分の歳、3で割ってみな』は面白い話。詳細は以下の通り。<ネタバレ注意反転>

 要約すると『人生を24時間に例えると、自分の年齢を3で割るとその人が「今何時にいるか」がわかる』という話。劇中の例を出すと「24歳なら朝8時だろ。まだこれからじゃないか」、と使う。これは面白い。18歳なら朝6時なので「まだ始まってもいねえよ*1」と言えるし、厄年でも「まだ13時じゃねえか。これからこれから」と言える。

 たとえ欺瞞でも偽善でもこういう話は大好きです。かといってリアルワールドでこういうのを真顔で(特に説教で)使う人は信用できませんけどね。