クシャナ殿下について

 風の谷のナウシカ [DVD]で、クシャナ殿下が捕らわれの身になった場面。蟲にやられた義手を見せて彼女が
「我が夫となる者はさらにおぞましいものを見ることになるだろう」
って言うじゃないですか。

 あれ、子供の頃に見たときは何の事だかわからなかったんでスルーしてたセリフなんですが、大人になって観ると「ああ、そういうことか」とわかる。ホント良く出来てる映画だよなあ。


 で、個人的なことを言わせて貰えばナウシカよりクシャナ様の方が好みでして。終盤で呟くように言う「行こう。所詮血塗られた道だ」なんて超絶かっこ良い。かと思うと腐海に不時着した時なんかは蟲の触手に怯えて頭を抱えて小さくなっていたりする。

 思うに、彼女は元々はそんなに強い人間ではなかったのかもしれない。漫画版を読んでいると一層よくわかるが、同族同士で骨肉相食む権力争いをしているトルメキア王家のただ中に生まれ育ち、彼女は強くならざるを得なかったのではないか。そう考えると彼女の強気な態度も生来のものではなく、必死で強がっているように見えてもの哀しい。しかし、だからこそ彼女は誇り高く、美しいのだ。
 
 そうやってこの映画を見てると、中盤でナウシカクシャナに対して「あなたは何を怯えているの?まるで迷子のキツネリスのよう」というセリフはあまりにも酷く感じる。「それを言っちゃあ・お終いよ」って事をまっすぐ言ってのけるナウシカ。そりゃあナウシカの言ってる事の方が正しくはあるんだけど、クシャナ側の人間としては「そこまで言わなくてもいいじゃないかっ」って気分になる1シーンだ。

  • 余談

 ベルセルクのグリフィスも似たようなキャラだと思う。
 幼い頃自分が目指した(目指してしまった)覇道。それについて来てくれる仲間、あるいはその過程で死んでいった敵味方の屍山を想い、彼らの為に「常に強くあらねばならない」「立ち止まるわけにはいかない」と思い詰める毎日が一体どれだけ苦しい事か。常人ならまず耐えられるものではない。してみると、王の資格の中にはこういう要素も含まれているのかも知れない。