解放の瞬間

 漫画を読んでいて「解放の瞬間」を目撃するのはとても気持ちが良い。僕はそういったシーンは大好きだ。


 例えば「ナウシカ」。骨肉相食む王位争いを繰り広げるクシャナの兄達が旧世界の「音楽」に出会い、全てを忘れて没頭していく様*1


 例えば「銃夢」。研究に全てを捧げ、人々を人体実験にかける事も厭わない(むしろ好んでやる)マッドサイエンティストのノヴァ教授が、敵を陥れるため自分が作った「平穏な生活を夢で見せる機械」の中で逆に自分が安らぎに気づくシーン。しゃぼん玉を見上げながら「…私は一体、何に駆られていたのだろう…」というセリフも良*2


 例えば「サスケ」。一族の仇を討つために旅行く仇敵(サスケ親子)を執拗に追いかけ続ける鬼姫が、旅の途中で絵を描くという事に出会って復讐を忘れて没頭していく様。


 出世欲、研究欲などの違いはあれ、彼らが取り憑かれているのは「妄執」と言うべき非常に強い感情だ。そうなってしまうと、「これがしたい」「こうしなきゃならない」という思いが強すぎるあまり他の一切合財が見えなくなる。

 しかしある時、ほんの些細な事でそれがまるで嘘のように消えうせて、新しい世界がぱあっと広がる。その解放の瞬間が見ていてとても気持ちが良い。

  • 余談

 つまるところ、自分がそうなりたいという願望もあるんだろうが。

*1:実際は庭の主に操られていたという側面があるとしても

*2:ただしその後すぐに元のキャラに戻るけど。まあ彼はそこが良いんだが