ハチミツとクローバー9巻
ハチミツとクローバー (9) (クイーンズコミックス―コーラス)
- 作者: 羽海野チカ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/07/14
- メディア: ペーパーバック
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うわー!なんですかこのヘビーな展開は!
たぶん、9巻を読んだ人は物語の中の誰かに自分を重ね合わせて見る事になる。
それは花本先生だったり、達夫だったり、カオルだったり、はぐだったり、竹本だったり。
あるいは遠い昔、その中の誰かのようになりたくてなりたくて仕方が無かった事を、鈍い痛みと共に思い出したり。
いずれにせよ、これだけは言える。
9巻は、刺さる。
未読の方は気をつけて読んでいただきたい。
<さて、ここから先はネタバレ解禁。例によって未読の人は回れ右。>
では9巻を読んで、ざらーっと感想ですよ。
・あゆちゃんの出番が少ないー。あゆファンとしてはちょっと悲しい。
・54話のラストのモノローグが超気になる。悲劇は勘弁してくださいよー。これほどみんなに幸せになって欲しいと思った漫画はないんだから。
・と思ったら、76Pの扉絵ってジョン・エヴァレット・ミレイの「オフィーリア」がモチーフだよね?だとしたらはぐちゃんは……いや!そんな事はしませんよね羽海野先生!そんなの嫌だよ?
・森田司=森田忍で、達夫=森田カオルという構図。巧いなあ。そして切ないなあ。
・光の方へ走っていけなかったカオル。「なんにも持ってない」なんて寂しい事言うなよ。達夫おじさんの気持ちをわかってあげられる優しさはお前の持ち物じゃねえか。
・美和子さんの「一生友達だからね!」に山崎轟沈。何ィ?キングス弁がなくなった?よく探せ。
いやー笑いました。ガンバレ山崎!
・てっきりはぐ―森田ラインで繋がると思ってたけど、はぐちゃんは花本先生の方でしたか。全然気付かなかったよ。
・「――ねえ修ちゃん、「生きる」って何?息して、ご飯食べて、あとは何すればいいの?描かないでなんて そんなのどうやって?死ぬまでなんて そんな長い時間 こわいよ」ってはぐちゃんのセリフ、刺さります。
描かないと死んじゃう人、歌ってないと死んじゃう人、書いてないと死んじゃう人。常になにか創ってないと心が死んじゃう「あちら側」の人達。僕は昔から彼らが羨ましくて羨ましくて、でも「こちら側」にいる事にどこかほっとしてしまう。「情熱」ってのは身を焼く鎖の別名なのかもしれない。
・9巻のラストで森田が逆転狙ってますけど、はぐちゃんに(少なくとも今の段階で)「描かなくてもいい」ってのはかなり酷じゃないかなー。森田もはぐちゃんとくっついたら(彼女の手前)描けなくなる事を覚悟して「一緒にいられればそれでいい」って言ってるんだろうけど、ソレって創作者にとっては死ぬより辛い事だろうし、その辛さを理解できるはぐちゃんが森田の気持ちに甘えるとも思えないんだけど…さてどうなるか。
・「持てる者」と「持たざる者」のお話がメインの9巻。
でも花本先生のように「見守る人」も竹本君のように「足掻く人」も十二分に魅力的。
終局が近いようですが、本当に皆さんの幸せを祈らないではいられません。
・まだ終わってないのに気が早い話ですが、この漫画はカラー頁を全再現した完全版が出る事が本日をもって俺の脳内会議で可決いたしました。つーか間違いなく出ます。逆に言えばこの傑作の完全版が出ないわけがありません。
期待してるぜ集英社!